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コラム

住宅の基礎工事|基礎工事の種類や一般的な施工手順を紹介します!

2023年5月31日

建物を建てる際の、一番初めの工程が基礎工事です。基礎とは建物を支える重要な箇所であり、この基礎工事により建物の耐震性が左右されるといっても過言ではありません。住宅購入を考える際には外装や内装といった目に見えるものに興味がいきがちですが、基礎工事は建物づくりにおいて何よりも重要になる工事です。
ここでは、基礎工事の種類や流れについて解説します。

基礎工事とは

基礎工事とは、建物の土台となる基礎部分を作る工事で、建物の丈夫さを左右するとても重要な工事です。基礎は鉄筋コンクリートで作られています。地盤と建物をつなぐパイプ役となって建物の重さなどの縦向きの力や、地震の揺れなどによる横向きの力を建物から地盤に伝えます。それにより不同沈下(ふどうちんか)という建物の一部分だけが沈んで傾いてしまう現象を防ぐことができます。

また昨今、長期優良住宅が注目されていますが、その認定に耐久性が必要条件となります。この耐久性において、基礎はとても重要な役割を担っています。

どんなに建物が頑丈にできていても、高温多湿で地震大国の日本では、基礎の耐久性が建物の耐久性に直結するからです。それほど基礎工事とは家づくりにおいて要であると言えるでしょう。

基礎工事の種類

基礎工事にはいくつかの種類があります。代表的なものとして杭基礎、ベタ基礎、布基礎、独立基礎、SRC基礎が挙げられます。

まずは地盤調査を行うことから始め、建物の規模や地盤の強さ、施工条件などにより使い分けます。ここではそれぞれの特性について紹介します。

杭基礎

杭基礎は、杭を直接地面に差し込む工法です。支持層と呼ばれる頑丈な地盤まである程度の深さのある軟弱な地盤の場合などに適しています。

杭を支持層のある数メートルの深さまで打つので、住宅を安定させるだけでなく、地震などによる液状化も防ぐことができる点がメリットです。一方で、地盤の軟弱な層が厚い場合はその分長い杭が必要になり費用がかさんでしまうのがデメリットと言えるでしょう。

杭基礎の工法には、大きく分けて支持杭と摩擦杭があります。
支持杭は、例えば盛り土などで地盤が軟弱な場合に採用されます。柱状改良や鋼管杭と呼ばれる杭を奥の支持層まで打って建物をしっかりと支える方法です。

摩擦杭は、地盤の軟弱な部分が厚く、杭を支持層まで到達させることが難しいケースなどに採用されます。杭を凹凸状に打ち、杭と土の間に発生する摩擦の力を利用して基礎を支える方法です。

杭基礎を採用するのは、地盤が弱く安定感が不十分な場所です。
そのため、杭基礎単独ではなく、杭基礎の上にベタ基礎や布基礎を設置することが多くなっています。

ベタ基礎

ベタ基礎は、床下全体を鉄筋コンクリートで覆い、床下に空間を作る基礎のことです。地面に蓋をしているような仕上がりになります。地震の揺れにも強く、地震が多い日本には最適な方法の一つです。

全面が土台となるので、根を張る地盤が弱くても施工できるケースがあります。耐久性に優れ、地面からの湿気を通さないのでシロアリの発生も防いでくれる点がメリットです。

全面に敷き詰めるのでコンクリートの使用量は多くなりますが、杭を打つ手間や土を掘る量は少なくて良いため、比較的施工がしやすいです。一方で、新築の場合は数年間コンクリートから水分が出るため対策が必要な点がデメリットと言えるでしょう。

布基礎

布基礎は、地盤に基礎を直接設置する直接基礎の工法の1つです。建物の主な柱や壁の下にコンクリートを設置する方法です。日本の木造住宅において古くから使われてきました。ある程度地盤の強度が求められる工法です。

柱や壁の重みで建物の負荷が集中する部分にのみコンクリートを敷設するので、地盤に接する面積が小さくなります。そして、ベタ基礎に比べるとコンクリートの使用量は少なくなります。そのため、ベタ基礎より軽量で、地盤への負担が小さい点がメリットです。

その反面、床下を覆うベタ基礎とは異なり、床下に土がむき出しになります。その結果、床下に湿気が溜まりやすく、シロアリの発生リスクが高まるのがデメリットと言えます。防湿対策と、定期的なシロアリ点検が必要です。

独立基礎

地盤に基礎を直接設置する直接基礎の1つで、主要な柱の下にだけコンクリートを敷設します。
布基礎よりさらに地盤に接する面積が小さいので、布基礎を行う地盤よりも強度の高い地盤に向いている工法です。

日本は地震大国であり、加えて近年の大規模地震の傾向から、一般住宅の基礎としてはほとんど使われていません。基本的には玄関ポーチの柱などに部分的に利用することになります。

建物でも住宅以外であればコンクリート使用量が少ない独立基礎が施工されるケースもあります。

SRC基礎

蓄熱床工法や逆ベタ基礎とも呼ばれています。
床下空間がなく、床下に砂利やコンクリートを敷き詰めて密閉構造にする方法です。コンクリートにH型鋼材を組み込む為、強度が高いという特徴があります。

メリットは、地震の揺れを吸収して分散するため耐震性が高く、床下がないため湿気やシロアリの被害リスクが少なくなる点です。また、地中からの熱を建物に伝えやすいため、夏は涼しく冬は天然の床暖房効果が期待できます。

しかし、床下空間がないということはSRC基礎では給排水の配管を基礎コンクリートで埋めてしまうため、一度設置すると位置の変更ができず、将来リフォームに制限がかかるところがデメリットです。計画当初から老後の生活スタイルまで見据えてプランを考えましょう。

基礎工事の一般的な施工手順

基礎工事は、宅地の造成工事の後、建物の建築工事としては最初に行われる工程です。

一般的に新築の木造戸建て住宅の場合施工期間は6ヶ月ほどで、このうちおよそ1ヶ月、つまり工事期間の6分の1をかけて基礎工事は行われます。

1ヶ月もかけて丁寧に行われる基礎工事の手順を見ていきましょう。

【基礎工事の一般的な施工手順】

  1. 地盤の調査
  2. 地縄張り・遣り方工事
  3. 掘削工事
  4. 砕石敷き
  5. 捨てコンクリートの施工工事
  6. 鉄筋や型枠工事
  7. コンクリートの打設工事
  8. 仕上げ

1 地盤の調査

基礎工事を開始する前に地盤調査を行います。新築でも建て替えでも安全のために必ず実施する工程です。

地盤の強度や軟弱性、硬さなど、そしてどれくらいの建築物の重さに耐えられて、沈下に抵抗する力があるかを調査することで、どの基礎工事を実施するのが適しているか検討します。

調査の結果、基礎工事では補いきれないほど地盤が弱かったり、予定していた基礎工事では安定性に不安がある場合には基礎工事の前に地盤改良工事を行いましょう。

2 地縄張り・遣り方工事

地縄張りとは、敷地内に縄やビニール紐などを張る仮設工事で、実際に建築する建物の位置や部屋の配置などを確認するために行います。

遣り方とは、字なわばりの外側に木の杭や板をなどを張り巡らせて、建物の正確な位置や基礎の高さ、水平などをわかるようにする仮設工事のことを言います。

後々、基礎のコンクリートなど動かない物へ目印(基準墨)をつけ終えると、地縄張りと遣り方は役目を終えて撤去されます。

3 掘削工事

基礎を造るために土地を掘り起こす工事で、根切りとも呼ばれます。
基礎を敷設する箇所を、基礎の底となる地盤までパワーショベルなどの重機を用いて土を掘ります。

基礎工事の工程の中では最も時間を要する工事で、排水工事と同時に施工することも少なくありません。掘削作業中に配管などが発見された場合には配管を損壊しないよう、手掘りなどの対応も必要となり、より時間がかかることになります。

4 砕石敷き

建物の基礎を配置する箇所に細かく砕かれた石(砕石)を敷き詰め、ランマーという機械を用いて地盤を固める工事です。

敷き詰めた砕石は、機械を用いて転圧をし、締め固めます。地盤を強化し、建物の沈下を防止するための作業で、この地盤を固める作業のことを地業といいます。

5 捨てコンクリートの施工工事

捨てコンクリートは、実際に建物を建てる位置を確認するために施工するもので、工事を進めやすくするためにとても大切な作業です。補強のものではなく、強度は求められていません。
なお、コンクリートが乾くまでに数日かかります。

6 鉄筋や型枠工事

基礎を鉄筋コンクリートで形成するために、鉄筋(鉄の棒)を格子状に組み立てていく配筋工事を行います。配筋は基礎の寿命や強度に大きく影響する工程のため、作業内容が法律(建築基準法)で細かく定められています。

配筋行為が完成したら捨てコンクリートに記した基準墨をもとにコンクリートを流し固めるための型枠を組みます。型枠は木製や鉄製のものを使用します。型枠組が完成すると、建物と基礎をつなぐ金属製の部材(アンカーボルト)を設置します。

7 コンクリートの打設工事

型枠の中にコンクリートを流し込むことを「コンクリート打設」と呼びます。まずは基礎のベースとなる型枠にコンクリート打設をします。そのベースが乾燥したら、次は基礎内部に打設します。コンクリートを流し込んだ後は振動を発するバイブレーターと言われる機械を利用し、コンクリートなかの空気を抜くなど、隙間なく敷き詰めます。中の空洞が多いほどコンクリートの強度は低下するので、必要不可欠な作業です。

コンクリートはおおよそ3~10日ほどで歩ける程度の硬さまで乾きます。その間コンクリートをブルーシートなどで覆い、適度な温度・湿度を保ちながら外部からの衝撃や風雨から基礎を守ります。

完全に乾燥するまでには1ヶ月ほどかかり、この期間を養生期間といいます。

8 仕上げ

養生期間を終えたら型枠を外します。

その後、コンクリートにひび割れなど初期の不良が発生していないか、仕上がりの状態を確認します。その際、アンカーボルトがコンクリート打設にずれたり曲がったりしていないか、なども重要なチェックポイントです。

基礎工事について知っておきたいポイント

基礎工事はさまざまな要因で単価が大きく変動します。家づくりは何かとお金がかかりますが、少しでも出費を抑えようと費用面だけに着目していてはいけません。

家の土台となり、耐震性も左右させる基礎工事の本質を見失わないよう、着工前に注意しておくべきいくつかのポイントがあります。以下から簡単に解説していきましょう。

基礎工事にかかる費用は削らない方が良い

基礎は建物の土台となり、耐久性・耐震性を裏付ける重要な構造物です。

基礎工事の単価はエリアや設計内容によって大きく変動するためあくまで目安ですが、1㎡当たり15〜20万円ほどです。これは新築住宅全体の工事費用の約5〜10%程度にあたります。少しでも建築費用を下げようと、基礎工事単価・費用を削る行為は、建物の耐久性や耐震性を脅かす可能性があります。

経年による地盤状態の変化に応じて、後々基礎を補強することも可能ではありますが、もともとの基礎が頑強でなければ補強しても意味がないでしょう。

基礎に手を加えるということは、その上に建つ建物を含め、基礎から建物を建て直すことと同義と捉えても過言ではありません。新築時に基礎工事費用を少しだけ削れたとしても、あとで莫大な費用が必要になってしまえば本末転倒です。ですから、費用面においても、安全面においても基礎工事費用は削らない方が良いと言えるでしょう。

入居予定者は基礎工事を見学に行くべし!

基礎工事は必ず見学に行くようにしましょう。

私たち素人には、基礎工事を見学しても何をしているのか全くわからないと思います。ですが悲しいことに、ずさんな基礎工事というものが存在するのも事実です。

自分の大切な家の、耐久性や耐震性を左右する重要な基礎を、手抜き工事ではなくきちんと丁寧に施工してもらうためにも、事前に知識を身につける努力をし、しっかり自分の目でもチェックしに行くことが大切です。
つい「迷惑になるのでは?」と遠慮してしまう方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

ただし、マナーとして事前に現場監督に見学の日時を伝えるようにしましょう。10時や15時ころに行くと休憩前であることが多いようです。飲み物などの差し入れを持って行って、作業のやり方などわからないことは質問してみてもいいでしょう。工事内容で不安な点がある場合は、職人さんに直接言うのは避け、現場監督や工務店の担当者などを通して聞くのがベストです。

複数社に見積もりを出して施工業社を選ぶと良い

施工会社の選定に関して、ハウスメーカーに一任すれば手間は減りますが、全体的な費用は高額になる傾向にあります。

そのため、基礎工事だけを単独の施工会社に依頼する方法もあります。ただし、基礎工事は、設計や建築と密接に関連するため、あまりおすすめではありません。それでも自身で施工会社を選定するということであれば、基礎工事現場の地盤・事情に精通している、エリア・地域の優良施工事業者を選定するようにしましょう。

選定方法は、複数の候補先を選び、同じ条件で見積もりを依頼することです。見積もり依頼時の担当者の対応や、提出された見積書の内容などから施工業者を選定する判断材料が得られます。

たとえば、担当者のヒアリング力と提案力は施主のニーズに沿っていたか?見積書は「施工費一式」というあいまいなものではなく、作業や材料ごとに細かく明確に記載されているかなどが判断材料になるでしょう。

まとめ

基礎工事は建物の建築工事における最初の工程です。基礎は家の土台となり、地盤と建物をつなぐとても重要なパイプ役で、その良し悪しが家の耐久性や耐震性を左右するので、とても重要な工事です。

基礎の作り方にはいくつか種類があり、どの手法にするかは地盤調査の結果によって決まります。
大切な家で長く安心して暮らすためにも、正しい知識を身につけて、工事の際には見学に行って自身の目でもチェックするようにしましょう。