内装工事の費用は減価償却できる|耐用年数のルールを理解することが重要ポイント!
2023年5月31日
内装工事にかかった費用は減価償却にて計上することができます。
内装工事といっても工事の内容や目的はさまざまな種類があり、扱い方が異なる可能性があります。正しく理解し会計処理をすることで税金対策にもなります。
ここでは内装工事の費用を減価償却する計算方法や勘定科目、耐用年数の調べ方、減価償却時に注意したいポイントをまとめています。
内装工事は減価償却で会計処理ができる
内装工事とは、塗装工事やフローリング・カーペットなどの床材、壁紙や天井の張り替え、間取りの変更などといった建物の内部に関する工事のことを言います。
内装工事を行うことで不動産の価値向上につながるため、内装工事にかかる費用は固定資産の一部として扱われます。そのため内装工事にかかった費用は経費として処理できますが、内装工事を行なった年に全額を一括で計上することができません。
定められた耐用年数の期間、複数年にわたって分割して経費として計上します。
例えば内装工事に400万円かかり、該当の工事の耐用年数が5年だった場合、毎年80万円を経費として計上することができるのです。この会計処理を減価償却といいます。
減価償却の耐用年数とは
減価償却で会計処理をする際に、耐用年数という概念を理解しておく必要があります。
耐用年数とは、ある資産においてその機能や価値を維持できる期間のことをいい、資産の内容や種類によって耐用年数は異なります。内装工事における耐用年数は、工事に使われた材料や施設の耐用年数に基づいて計算されることになります。例えば、壁紙や天井クロスの耐用年数は10年程度、フローリングやカーペットは15年程度が目安です。
こうした資産の耐用年数は、財務省令の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって細かく定められています。資産の種類・構造、用途などから耐用年数を知ることができます。
ただし耐用年数は画一的に定めたものであり、実際の寿命や各メーカーで定めている耐久年数とは別物であることを理解しておきましょう。
参考:東京都主税局 「償却資産の評価に用いる耐用年数」、国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」
内装工事の耐用年数と勘定科目
内部工事の費用は、まとめて全てを固定資産として計上できるわけではなく、内装工事の内容などから項目を分別する必要があります。内装工事にかかる費用は、大きくわけて以下の2種類の勘定項目で計上することができます。
【内部工事にかかる費用の勘定項目】
- 建物
- 建物附属設備
そのため、内装工事の見積書や請求書を確認しながら、「建物」か「建物付属設備」のどちらに該当するのか、分ける作業から始める必要があるでしょう。
【建物】に区分される費用の耐用年数
内装工事による内部造作物(例えば作り付け家具やパーテーションなど)は、建物の構造物界なかに関係なく、「建物」の勘定項目として、建物の耐用年数を基準に考える費用があります。建物の構造や用途によって耐用年数が設定されています。
構造・用途 | 事務所用 | 飲食店用 | 店舗用 |
---|---|---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造のもの | 50年 | 34年 | 39年 |
れんが造、石造又はブロック造のもの | 41年 | 39年 | 39年 |
金属造のもの(骨格材の肉厚が4ミリメートル超) | 38年 | 31年 | 34年 |
金属造のもの(骨格材の肉厚が3ミリメートル超4ミリメートル以下) | 30年 | 25年 | 25年 |
金属造のもの(骨格材の肉厚が3ミリメートル以下) | 22年 | 19年 | 19年 |
木造又は合成樹脂造のもの | 24年 | 20年 | 22年 |
木造モルタル造 | 22年 | 19年 | 20年 |
【建物付属設備】に区分される費用の耐用年数
建物は構造物そのものであるのに対して、建物付属設備はその建物の効用を向上させるものを示します。
例えば、賃貸オフィスや物件における電気工事は、建物附属設備として処理することが一般的です。
ただし一般的に家庭で使用するような照明器具などは消耗品、家庭用エアコンは器具および備品などの勘定項目で処理できるケースもあります。
以下で建物付属設備に区分される費用の耐用年数を紹介します。
設備の内容・種類 | 耐用年数 | |
---|---|---|
アーケード又は日よけ設備 | 主として金属製のもの: 15年 | 15年 |
その他のもの | 8年 | |
冷房、暖房、通風又はボイラー設備 | 冷暖房設備(冷凍機の出力が22キロワット以下のもの) | 13年 |
給排水又は衛生設備及びガス設備 | 15年 | |
店用簡易装備 | 3年 |
内装工事の減価償却の計算方法
減価償却の計算方法には、定額方と定率法の2種類があります。
- 定額法:資産の価値を一定額ずつ計上する方法
- 定率法:資産の価値を一定割合で年々計上する方法
ただし、内装工事は定額法での減価償却を行うことが決まっています。定額法では、内装工事にかかった費用を、耐用年数で分割します。
【内装工事の減価償却の計算方法】
該当の内装工事の費用÷耐用年数=減価償却費用
計算自体は簡単ですが、工事にかかった費用の仕分けと耐用年数を正確に把握することが重要です。
などの必要な情報を正確に把握しましょう。
内装工事を減価償却するときのポイント
内装工事にかかった費用を減価償却する場合、正確かつ適切に会計処理する必要があります。内装工事費用を減価償却するときに、注意したいポイントについて紹介します。
内装工事の目的によって減価償却の方法が異なる
これまでに紹介してきたように内装工事を減価償却する際は、耐用年数を調べる必要があります。
ただし内装工事の目的や用途によって、同じ工事でも扱い方が異なる可能性があるため、十分注意しましょう。以下に内装工事の目的別の減価償却の方法を紹介します。
改修工事が目的の場合
改修工事として内装工事を行なった場合、工事をおこなうことで建物の資産価値を高めることができると考えられます。
そのため改修工事の内容によって、内装工事の費用を固定資産として計上して減価償却するケースと必要経費に計上するケースがあるのです。
内装工事が資本的支出と判断されれば固定資産、修繕費であると判断されれば必要経費として処理します。
資本的支出と修繕費の違いは、以下のとおりです。
- 資本的支出:固定資産の価値向上、耐久性を補強する工事
- 修繕費:維持管理や壊れた部位などを原状回復するための工事
資本的支出なのか修繕費なのかの判断が難しい場合は、金額が60万円以下の場合や、対象の資産の前期末の取得価格の10%程度の金額であれば、修繕費として経費計上することができます。
原状回復工事が目的の場合
原状回復工事とは、入居者の退去時に、入居当初と同じレベルの状態まで回復させる工事です。原状回復工事の費用は修繕費に該当し、必要経費として計上することができます。
ただし仕分けの時点で、該当の内装工事が原状回復の目的であることを明記しておく必要がある点には留意ください。
オフィス移転時が目的の場合
オフィスを移転することが目的の内装工事は、減価償却をすることが可能です。内装工事の内容から、正確な耐用年数を調べて計上することが大切です。
所有物件か賃貸物件かで耐用年数は異なる
同じ物件であっても、その物件を所有しているのか、賃貸しているかによって耐用年数の計算方法が異なる点に注意が必要です。
所有建物の内装工事の耐用年数
所有建物の場合、新築か中古かによって耐用年数が異なります。
- 新築の場合:建物の種類から法定耐用年数を適応
- 中古の場合:使用可能期間から耐用年数を算出
中古の場合の耐用年数の算出方法は以下のとおりです。
(法定耐用年数 – 経過年数)+(経過年数 × 20%)
ただし築年数がすでに法定耐用年数を過ぎている場合、法定耐用年数に20%をかけた数値を耐用年数として適用します。なまた内装工事費用が中古物件の資産価格の50%を超える場合は、新築と同様の扱いになる点にも注意しましょう。
賃貸物件の内装工事の耐用年数
賃貸物件を内装工事する場合は、国税庁の「No.5406 他人の建物に対する造作の耐用年数」を参考にしましょう。賃貸物件の場合の耐用年数耐用は、造作の種類や用途などを考慮して合理的に見積もることが求められており、明確な耐用年数が記載されていません。10~15年程度の耐用年数が一般的です。
また、貸借期間の定めがある場合や貸借期間の更新ができないといった場合は、賃貸期間を耐用年数として考えることも可能です。
参考:国税庁「No.5406他人の建物に対する造作の耐用年数」
まとめ
内装工事にかかる費用は減価償却にて会計処理することができますが、耐用年数を正確に把握することがポイントです。減価償却の方法は内装工事の目的や所有か賃貸かなどの条件によって扱い方が異なるため、しっかり確認するようにしましょう。また内装工事は工事の内容によって勘定項目を仕分けする必要があります。自身で判断が難しい場合は、専門家に相談しながら進めるといいでしょう。