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コラム

賃貸における「東京ルール」とは?原状回復ガイドラインをわかりやすく解説

2023年11月24日

賃貸物件の退去時の原状回復費用の負担を巡るトラブルなどを防ぐため、東京都では2004年に賃貸住宅紛争防止条例を制定し、いわゆる「東京ルール」と呼ばれています。「東京ルール」では宅地建物取引業法による重要事項説明以外に、4つの説明事項が設けています。

「東京ルール」の具体的な内容や条例にもとづく考え方をまとめた『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』について、解説していきます。

賃貸における「東京ルール」とは?

賃貸における「東京ルール」とは、賃貸住宅紛争防止条例のことを指します。正式名称は、「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」といいます。賃貸物件の退去時の原状回復や、入居中の修繕を巡るトラブルを防止する目的で制定されました。

「東京ルール」では、不動産会社である宅地建物取引業者が、契約時に以下の4点について説明を行うことを義務付けています。

<東京ルールによる説明事項>

  • 原状回復の基本的な考え方
  • 入居中の修繕の基本的な考え方
  • 特約の有無や内容など借主の負担内容
  • 入居中の設備等の修繕や維持管理などに関する連絡先

賃貸住宅紛争防止条例は2004年3月31日によって公布され、2004年10月から施行されました。東京都では、賃貸住宅紛争防止条例が制定された背景や条例にもとづく考え方を『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』としてまとめています。

「東京ルール」が作られた背景

「東京ルール」が制定されたのは、東京都では賃貸物件に居住する割合が高く、契約や退去時の敷金精算、管理などに関わるトラブルが数多く寄せられていることが背景にあります。たとえば、退去時の敷金精算を巡るトラブルでは、原状回復費用の貸主と借主のそれぞれの負担範囲に関することが挙げられます。

そこで、不動産の賃貸借契約に関する深い知識を持っていないことが多い借主を保護するため、「東京ルール」が設けられました。

「東京ルール」が適用される賃貸物件は?

「東京ルール」は東京都の条例ですので、適用されるのは東京都に限られます。東京ルールは、以下のすべてを満たす物件が対象です。

  • 宅地建物取引業者が媒介(仲介)や代理を行う物件
  • 東京都内にある居住用の賃貸物件
  • 2004年10月以降に重要事項説明を行い、新規賃貸借契約(更新契約を除く)を締結する物件

東京都以外に事業所を構える宅地建物取引業者も、東京都内の居住用賃貸物件の媒介や代理を行う場合は対象に含まれます。一方で、宅地建物取引業者を介さずに貸主と直接、賃貸借契約を結ぶケースは対象外です。また、居住用物件のみを対象としていますので、店舗や事務所などの事業用物件は除かれます。

「東京ルール」の内容

退去時の費用と入居中の設備修繕費用について、「東京ルール」の具体的な内容を『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』をもとに解説していきます。

退去時の費用

『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』では、「東京ルール」もとづいて、退去時の原状回復に伴う費用を貸主と借主のいずれが負担するのか、考え方が示されています。

引用元:賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」

貸主の負担になるケース

退去時に貸主の負担になるのは、経年変化や通常の使い方による汚れや傷、破損などの損耗です。また、破損などはしていなくても、次の入居者を確保するために交換などを行うケースも、貸主の負担となります。借主が通常の暮らし方や使い方をしていてもできる損耗や故障かどうかが、判断基準です。

【貸主の負担になるものの例】

  • 破損や紛失によらない鍵の取替え
  • 借主が通常の清掃を行っている場合のハウスクリーニング
  • 借主が設置したエアコンの壁の跡やビス穴
  • 日照による壁紙の変色
  • 破損していない場合の畳の表替えや裏返し
  • 家具の設置による床やカーペットの凹みや跡
  • 壁の画鋲やピンの穴(下地ボードの張り替えが不要な程度)

借主の負担になるケース

退去時に借主の負担になるのは、故意や過失、あるいは通常の使用方法に反する使い方をしたケースなどによる損耗や故障です。また、故障や不具合を放置したり、手入れを怠ったりしたことが原因で損耗や傷ができたり、程度が大きくなった場合も、借主の負担となります。借主に責任がある損耗や故障かどうかが、判断基準となります。

【借主の負担になるものの例】

  • 鍵の不適切な使用による破損や紛失による取替え
  • 清掃を怠ったことによって生じた風呂やトイレ、洗面台の水垢やカビ
  • 手入れを怠ったことによる台所の壁やガスコンロ置き場、換気扇の油汚れやススの付着
  • 不注意によって雨が吹きこんだことによるフローリングの色落ち
  • 喫煙による壁紙のヤニや臭いの付着
  • ペットによる柱などの傷や臭いの付着
  • 壁のくぎ穴・ビス穴(下地ボードの張り替えが必要な程度)

その他の例外ケース

退去時の原状回復の費用負担には例外があり、「東京ルール」においても、通常の原状回復義務を超えた負担を行うことを特約で定めることが認められています。

特約が有効とされるには判例などから3つの要件が必要とされていることが、『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』においても示されています。この要件とは、「特約の必要性があり、暴利的でなく、客観的・合理的理由がある」「借主が特約によって通常の原状回復義務を超えた負担をすることを認識している」「借主が特約による原状回復義務の費用負担を行う意思を示している」の3つです。

『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』では、「都の相談窓口に寄せられた相談事例」として特約の例として、ハウスクリーニング費用が挙げられています。

特約による定めがある場合には賃貸借契約書に記載されています。また、特約の有無や内容は「東京ルール」における説明事項に含まれているため、契約前に宅地建物取引業者から説明があります。

入居中の設備修繕費用

『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』では、「東京ルール」もとづいて、入居中の設備などの修繕費用についても貸主と借主のいずれが負担するのか、考え方が示されています。

貸主の負担になるケース

基本的に貸主は借主が住宅で通常の使い方で住むうえで必要な修繕を行う義務があります。必要な修繕の範囲は、家賃や築年数、物件の構造、環境などの要素から総合的に判断されるほか、損耗の程度にもよるため、物件によって異なります。

基本的に経年劣化による設備機器の故障の修繕費用は貸主の負担です。

【貸主の負担になるものの例】

  • 経年劣化による給湯器の故障
  • 経年劣化による備え付けのエアコンの故障

借主の負担になるケース

入居中の設備修繕費用で借主の負担になるのは、故意や過失のほか、通常の使用方法に反する使い方をしたケースなどによる故障です。また、不適切な使い方や本来の目的に反する使い方をした場合も、借主の負担となります。借主の責任が問われるかどうかが、判断基準となります。

【借主の負担になるものの例】

  • お風呂の空焚きによる給湯器の故障
  • エアコンの定期的なフィルターの掃除を怠ったことによる異臭の発生

その他の例外ケース

入居中の設備修繕費用の負担で、例外となるのは特約による定めがあるケースです。「東京ルール」では小規模な修繕を借主の負担とする特約を付帯することもできるとされています。たとえば、備え付けの照明器具の電球や蛍光灯の交換、給水栓や排水栓のパッキンの交換などが挙げられます。

入居中の設備修繕費用についても、特約がある場合には賃貸借契約書に記載されています。また、「東京ルール」にもとづいて、契約前に宅地建物取引業者から説明を行うことが義務付けられています。

賃貸物件でのトラブルを避けるためのポイント

『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』では、賃貸物件の契約と住まい方で注意すべき点が示されています。

入居時

賃貸借契約を締結する前に、宅地建物取引業者から重要事項の説明のほか、「東京ルール」にもとづいて、「原状回復の基本的な考え方」「入居中の修繕の基本的な考え方」「特約の有無や内容など借主の負担内容」「入居中の設備等の修繕や維持管理などに関する連絡先」の4点の説明が行われます。

賃貸借契約によるトラブルを避けるためには、説明をよく聞いて疑問点があれば質問をして、納得してから契約を結ぶことが大切です。納得できないことがある場合には、契約を一旦保留にするのが望ましいです。公的機関では、東京都の不動産業課や消費生活総合センターなどに相談してみましょう。

また、入居時には物件の状況確認をしっかりと行っておくことがポイント。できれば、貸主や管理会社の立ち会いのもとで、傷や汚れなどがある場所を確認し、「入居時の物件状況確認書」、または「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト」に記入します。(『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』にサンプルあり)

貸主や管理会社が立ち会えない場合も、「入居時の物件状況確認書」を作成して、日付入りで傷や汚れのある箇所の写真を撮り、貸主や管理会社に報告します。

入居時の物件の状況を明確にしておくことで、入居前からあった傷や汚れを立証しやすくなり、退去時の原状回復費用を巡るトラブル防止に役立ちます。

入居中

入居中に設備などの修繕が必要になった場合には、速やかに貸主や管理会社に連絡をします。不具合や故障が起きてから時間が経ってしまうと、経年劣化による自然損耗か、あるいは通常の使用によるものなのか、判断がつきにくくなるため、修繕費用の負担を巡ってトラブルになる恐れがあるためです。

また、貸主の承諾を得ずに、壁の色を塗り替えたり、設備の交換を行ったりすると、退去時に原状回復費用を請求されることになります。部屋の改修や設備のグレードアップを行いたいときは、貸主の承諾を得て原状回復費用についても確認をとるようにしましょう。

退去時

退去時には荷物をすべて運び出し、不用品を処分して家具などの粗大ゴミを残さないようにします。室内にものやゴミが残っていると、処分費用のほか、処分を行うまでの日割り家賃も請求される恐れがあります。退去時に掃除を行っていない場合や日常的な清掃を怠っていた場合には、専門業者によるクリーニング費用を請求される可能性がある点にも注意が必要です。

また、退去時にも貸主や管理会社の立ち会いのもと、物件の状況確認を行っておくこともポイント。「入居時の物件状況確認書」や「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト」と現況を照合しながら、傷や汚れなどの損耗のある箇所を確認します。そして、借主の故意や過失、あるいは通常の使用方法に反する使い方をしたことによる損耗や特約による修繕箇所を確認するという流れです。その際には「退去時の物件状況確認書」を作成するか、「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト」を活用するのが望ましいです。(『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』にサンプルあり)

貸主や管理会社の立ち会いが難しい場合には、「退去時の物件状況確認書」を作成するとともに、写真の撮影を行って報告を行います。

こうした対応をとることで、退去時の原状回復費用の負担を巡るトラブルの防止に役立てられます。

まとめ

「東京ルール」は、借主が退去時の原状回復費用の負担や特約について、理解したうえで賃貸借契約を締結できるようにするための仕組みといえます。賃貸物件を借りる際には、契約内容や原状回復の義務について理解するとともに、入居中は適切に手入れなどを行うように努めましょう。