原状回復とリフォーム、リノベーションの違いは?目的やメリットを解説
2023年11月24日
入居者が退去した後、通常、原状回復工事を行いますが、アパートやマンションの状態や空室の状況によってはリフォームやリノベーションをするという選択肢もあります。リフォームやリノベーションは原状回復よりも費用を要しますが、賃料のアップや空室の解消のために有効な施策です。
原状回復工事とリフォーム、リノベーションのそれぞれの目的やメリット・デメリット、向いているケースなどについて解説していきます。
原状回復とリフォーム、リノベーションの違いは?
原状回復は傷んでいる箇所や故障した箇所を入居前の引き渡し時の状態に戻す工事を指します。リフォームは内装や設備などを新しいものに変える工事をいいます。リフォームには一室全体のフルリフォームと部分リフォームがありますが、ここでは主に部分リフォームを指します。リノベーションは新しい価値を付加するために、内装や設備を一新する工事が該当し、間取り変更を伴うフルリノベーションが中心です。
また、リフォーム・リノベーションでは、建物全体の外装工事が行われることもあります。
原状回復 | リフォーム | リノベーション | |
施工期間 | 3日~3週間程度 | 2週間~1ヵ月程度 | 1ヵ月~3ヵ月程度 |
費用の目安 (1住戸) | 数万円~20万円程度 | 50万円~100万円程度 ※外装は別途 | 400万円~1000万円程度 |
目的 | 室内を元の状態に戻す | (外装や)内装、設備などを新しいものに変える | 間取りや(外装)、内装、設備などを一新して、新しい価値を付加する |
原状回復の施工期間は3日~1週間程度が中心ですが、床材や壁紙を全面張り替えるケースなど、工事箇所が多い場合には、3週間程度かかることがあります。原状回復工事は入居者が退去時に費用を負担する部分もあり、オーナーの負担は数万円~20万円程度が目安となります。
リフォームの施工期間は2週間~1ヵ月程度です。広さや工事内容によって費用が変わりますが、アパートの場合で50万円~100万円がボリュームゾーンです。
リノベーションは大がかりな工事になるため、1ヵ月~3ヶ月程度の施工期間が必要です。費用は広さや工事内容によって幅があり、400万円~1,000万円程度が目安になります。
原状回復とは
原状回復とは、入居者が退去した際に内装や設備などのキズや磨耗、故障などの補修や修理、交換などの工事や清掃を行い、引き渡し時の状態に戻すことをいいます。
原状回復は、次の入居者が使うための準備として、元の状態に戻すのに対して、リフォームやリノベーションは次の入居者の確保や空室の解消を目的としているのが大きな違いです。
原状回復の目的
原状回復は次の入居者を入れるために行うもので、傷んだ箇所を修繕することで劣化を防止する目的もあります。原状回復工事で傷んだ壁紙や床材の貼り換え、あるいは設備の交換を行う際には、基本的に以前と同じものや同等のものを使用します。
原状回復を行うメリット
入居者の退去に伴って原状回復を行うと、以下のメリットがあります。
- 工事にかかるコストを抑えられる
- 工事期間が短い
原状回復は傷んだいる箇所だけを直し、一部は貸主の負担となることもあるため、オーナーの費用負担を抑えられることがメリットです。また、工事期間が短いため、すぐに次の入居者が見つけるような物件では空室期間も短くできます。
原状回復を行うメリット
入居者の退去に伴って原状回復のみを行うと、以下のデメリットがあります。
- 全体の印象は大きく変わらない
- 修繕箇所が目立つ可能性がある>
原状回復工事では損耗のある場所の修繕のみを行うため、築年数が経過した物件では全体の印象は変わらず、古さが目立つ状態のままとなる可能性があります。また、一面の壁の壁紙のみを張り替えたケースなど、一部が真新しい状態になると、修繕箇所が目立ってしまう可能性があることもデメリットに挙げられます。
修繕範囲を広げることや、原状回復を基本としながらも、一部に部分リフォームを取り入れることなどを検討してみましょう。
原状回復を行うのがおすすめなケース
原状回復を行うのがおすすめなケースとして以下が挙げられます。
- 築浅で物件の状態が良好
- すぐに入居者が決まりやすい
- 工事費用を抑えたい
築浅で物件の状態が良好な時期は、リフォームやリノベーションを行う必要性が低いです。入居者を募集するとすぐに決まることが見込めるケースや、既に次の入居者が決まっているような状況では、原状回復工事で十分です。また、予算の問題から、工事費用を抑えたい場合にも原状回復を選択することになります。
リフォームとは
リフォームとは、老朽化した内装や設備などを新しいものに変えて新築時のような状態にすることをいいます。ここでは主に、壁紙の貼り替えや床材の張り替え、キッチンや洗面台、トイレといった水回り設備の交換といった、部分リフォームを実施するケースが該当します。
原状回復では損耗のあった箇所に限って修繕や交換を行うのに対して、リフォームは老朽化している内装や設備を新しくするというのが異なる点です。また、リノベーションとの違いでは、リフォームは内装や設備の一部を新しくするのに対して、リノベーションは現代のニーズに合う間取りや設備に変更するなど、新しい価値を付加するために行うものです。
リフォームの目的
リフォームは建物の老朽化によって、空室期間が長引く、あるいは空室が目立つようになった場合、あるいは賃料を下げなければ入居者がつかなくなった場合に、空室リスクの軽減や賃料アップを目的に行うものです。
老朽化によって古さが感じられたり、古い設備が使われていたりする状態では、競合物件よりも見劣りしてしまいがちです。そこで、内装や設備を新しいものに変えることで、入居者を集めやすくなることが期待できます。
リフォームを行うメリット
入居者が退去したときにリフォームを行うと、以下のメリットがあります。
- コストを抑えて空室対策が行える
- 賃料の低下を抑制できる
リフォームを行い、古くなった内装や設備を新しくすることで、空室対策や賃料の低下の抑制が期待できることがメリットです。リフォームはリノベーションよりも費用が安いため、リノベーションよりも短期間で工事費用を回収できることが見込めます。
リフォームを行うデメリット
入居者の退去時などにリフォームを行うと、以下のデメリットがあります。
- コストをかけても空室の改善につながらない恐れがある
- リフォームの内容によっては工事期間が長い
リフォームは原状回復よりも費用がかかりますが、コストをかけても必ずしも空室の改善や賃料のアップにつながらないというリスクがある点がデメリットです。また、リフォームの内容によっては工事期間が長くなり、その間、次の入居者に貸すことができません。
アパートやマンションなど賃貸物件のリフォームを検討する際には、費用対効果を考慮することが大切です。また、敷金や礼金、更新料の値下げを行う、フリーレントを導入するといった他の対策も検討しましょう。
リフォームを行うのがおすすめなケース
リフォームを行うのがおすすめなケースとして、以下が挙げられます。
- 空室時に入居希望者からの問い合わせが減少傾向にあるケース
- 内装や設備の老朽化が気になるが、間取りには大きな問題がないケース
- 立地するエリアに賃貸需要があるケース
なかなか入居者が決まりにくくなっている状況であっても、建物全体の老朽化がそこまで進んでなく、間取りにも問題がなければ、リノベーションを行う必要性は低いことから、リフォームが向いています。また、リフォームを行うにあたっては、立地するエリアである程度、賃貸需要が見込めることも重要です。
リノベーションとは
リノベーションとは、内装や設備などを一新するとともに、新たな価値を付加して新築のときよりも性能を向上させることをいいます。アパートやマンションなど賃貸物件のリノベーションでは、間取り変更を伴うケースが中心です。
原状回復は損耗のある部分の修繕や交換などを行うのに対して、リフォームは内装や設備を新しいものに変えるという違いがありますが、リノベーションはさらに大規模な工事になります。新築のときよりも性能を向上させるのが、リフォームとの大きな違いです。
リノベーションの目的
リノベーションは、間取りの変更や内装、設備などの一新を行って価値や性能を高めることで、空室リスクや賃料の低下リスクを軽減するほか、新たなニーズを掘り起こすことが目的です。リノベーションでは、たとえば、和室を含む2DKの間取りの住戸を現代のライフスタイルに合った洋室のみの1LDKにする、3点式ユニットをトイレ・バス別室に変えるといった例が挙げられます。
リノベーションを行うことで入居者を集めやすくなるだけでなく、賃料のアップも見込めます。
リノベーションを行うメリット
入居者の退去時などにリノベーションを行うと、以下のメリットがあります。
- 以前よりも入居希望者が集まりやすくなる
- 賃料をアップできる可能性がある
- 建て替えよりもコストを抑えられる
リノベーションによって現代のライフスタイルに合わせた住まいにすることで、以前よりも賃貸物件を探す多くの人の目に留まりやすくなり、入居希望者が集まりやすくなることがメリットとして挙げられます。リフォームを行う場合よりも、賃料をアップできる可能性があります。
また、リノベーションは費用が高額とはいえ、建物全体でみると建て替えよりも費用を抑えられることもメリットです。
リノベーションを行うデメリット
入居者の退去時などにリノベーションを行うと、以下のデメリットがあります。
- 高額な工事費用がかかる
- 工事期間が長い
- 躯体が傷んでいる可能性がある
リノベーションは高額な工事費用がかかることが多く、費用をかけても必ずしも入居者の確保につながらないというリスクもあります。工事期間が長いため、賃料収入を得られない期間が長いこともデメリットといえます。また、老朽化が進んでいる物件では躯体が傷んでいると、補修費用に想定外の費用がかかるケースもあります。
リノベーションは高額な費用がかかるため、リノベーションを行うと入居希望者が集まることが見込めるかなど、地域の不動産業者から情報収集を行っておくことが望ましいです。また、建物の躯体の状態については、建築士などの専門家に相談しましょう。
リノベーションを行うのがおすすめなケース
リノベーションを行うのがおすすめなケースとして、以下が挙げられます。
- 空室時に入居希望者からの問い合わせが減少傾向にあるケース
- 立地するエリアに賃貸需要があるケース
- 老朽化が目立ち、現代のライフスタイルに合った間取り・設備ではないケース
- 安定的に賃料収入を確保したいケース
リノベーションも、空室時の入居者からの問い合わせが減少傾向にあり、一方で立地するエリアにはある程度の賃貸需要が見込めるケースが向いているという点は同じです。さらに老朽化が目立ち、現代のライフスタイルや賃貸物件を探している人のニーズに合わない場合は、リフォームでは解決が難しいため、リノベーションが選択肢となります。また、リノベーションは高額な費用がかかることから、今後、安定的に賃料収入を確保したい場合に向いています。
まとめ
入居者が退去した後、通常の原状回復工事を実施する以外に、入居者希望者からの問い合わせが少ない場合には、リフォームやリノベーションを行うという選択肢があります。コストをかけてリフォームやリノベーションを実施することで、入居者の確保や賃料のアップにつながるのか、十分に検討してから選択しましょう。