賃貸の原状回復工事は何をする?費用相場やよくあるトラブル例も紹介
2024年1月31日
賃貸契約を結ぶ際には、契約書に「原状回復」に関する条項が記載されています。原状回復とは、退去する際に入居前の状態に戻すことを指します。
この原状回復工事には、費用や範囲、トラブルの可能性など、知っておくべきポイントがいくつかあります。
本記事では、原状回復の基本的な知識から、費用負担の範囲、トラブルの例、工事の内容や費用相場、業者の選び方まで、わかりやすく解説します。
原状回復とは
賃貸借契約の「原状回復」とは、借主の故意・過失によって、または借主が通常の使用方法とはいえないような使い方をしたことで生じた損傷等を元に戻すことをいいます。そのため原状回復は“賃借人が借りた当時の状態に戻すこと”ではありません。
引用元:国土交通省:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
賃貸契約終了時に原状回復工事を行う重要性
賃貸契約終了時に原状回復工事を行うことは、賃貸借契約のルールとして定められています。原状回復工事を行うことで、次の入居者やオーナーに迷惑をかけず、物件の資産価値を守ることにつながります。
原状回復工事をしないことで、以下のデメリットが生じる可能性があります。
- 賃貸借契約のルール違反となる
賃貸借契約書には、原状回復に関する規定が記載されています。原状回復工事をしないことは、この規定に違反することになります。 - オーナーとのトラブルに発展する
原状回復工事をしないことで、オーナーとのトラブルに発展する可能性があります。オーナーは、原状回復工事費用の請求や、退去の延長、解約の申し入れなどをする可能性があります。
また、オーナー側としては原状回復工事をしないことで、物件の資産価値が下がる可能性があります。
物件の資産価値は、その状態によって大きく左右されます。原状回復工事をしていない場合、物件は「使用感がある」という印象を与え、資産価値が下がってしまうのです。
原状回復工事にかかる費用負担範囲
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると原状回復工事にかかる費用負担の範囲は、以下のとおりです。
貸主が負担する範囲 | 借主が負担する範囲 |
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貸主が負担する範囲は、物件の自然な劣化や、通常の使用による損耗・汚損です。具体的には、経年変化による壁紙の色あせや、ドアの開閉による壁の傷などが該当します。また、賃貸借契約書に特約で定められた範囲も、貸主が負担する場合があります。
借主が負担する範囲は、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・汚損です。また、賃貸借契約書に特約で定められた範囲であっても、借主が負担する場合があります。
「原状回復特約」を設けることで、オーナー負担は軽くできる
原状回復特約とは、賃貸借契約書に記載された特約で、原状回復工事の費用負担範囲を、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」や改正民法の規定とは異なるものに定めるものです。
例えば、「通常使用による損耗・汚損も借主負担とする」という特約を定めることで、オーナーが負担する原状回復工事費用の一部を借主に負担させることが可能になります。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」や改正民法の規定は、あくまでも原状回復の費用負担範囲に関する指針であり、強制力はありません。そのため、賃貸借契約書に特約を定めることで、これらの規定とは異なる費用負担範囲を定めることができます。
ただし、特約はあくまでも契約当事者間の合意に基づくものであり、公序良俗に反する内容や、借主に不利な内容は認められません。
原状回復特約が適用されるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 特約の内容が明確であること
- 特約が公序良俗に反しないこと
- 特約が借主に不利な内容でないこと
具体的には、特約は以下の点に注意して記載する必要があります。
- 原状回復工事の範囲を具体的に記載する
- 費用負担割合を明確に記載する
- 特約の適用を明確に記載する
また、特約は、賃貸借契約書の「原状回復に関する特約」の欄に記載する必要があります。なお、原状回復特約は、借主が契約時に特約の内容を了承していることが必要です。そのため、特約の内容を記載した契約書は、借主に交付する必要があります。
原状回復工事の費用負担に関するトラブル例
原状回復工事の費用負担に関するトラブルは、賃貸契約のトラブルの中でも多く発生しています。具体的には、以下のトラブルがよく見られます。
- 費用負担範囲の解釈に関するトラブル
- 費用の過大請求に関するトラブル
- 入居前の状態の確認に関するトラブル
原状回復工事の費用負担に関するトラブルを防ぐためには、以下のことに注意しましょう。
- 賃貸借契約書の内容をよく確認する
- 入居前の状態をきちんと確認する
原状回復工事の費用負担に関するトラブルが発生した場合は、オーナーと話し合いで解決を図りましょう。話し合いがうまくいかない場合、第三者の仲介を依頼することもあります。
原状回復工事の内容と費用相場
原状回復工事の内容は、オーナーの判断によって異なります。
一般的には、以下のようなものが考えられます。
項目 | 費用相場 |
---|---|
ハウスクリーニング | 1R・1Kで2万円~5万円 |
畳の張り替え | 1帖あたり6,000円~1万円 |
壁紙クロスの張り替え・穴の補修 | 1㎡あたり1,000円~2,000円 |
建具・ドアの交換 | ドア1枚あたり1万円~3万円 |
窓・サッシ・網戸・窓枠の交換 | 窓1つあたり2万円~5万円 |
鍵の交換 | 1つあたり5,000円~1万円 |
巾木の交換 | 1㎡あたり500円~1,000円 |
床材の張り替え・キズの補修 | 1㎡あたり1,000円~2,000円 |
幅木の交換 | 1㎡あたり500円~1,000円 |
キッチンの交換 | 100万円~300万円 |
トイレの交換 | 10万円~30万円 |
洗面台の交換 | 10万円~20万円 |
お風呂・ユニットバスの交換 | 150万円~400万円 |
上記の費用相場はあくまでも目安であり、実際の費用は、物件の状態や工事内容によって大きく異なります。
原状回復工事を依頼する業者の選び方
原状回復工事を依頼する際は、以下のポイントをチェックしましょう。
- 対応の早さ
- 見積りが分かりやすく、適正価格
- 実績が多い
- チェック体制・基準を設けている
- 保証・アフターサービスがある
対応の早さ
原状回復工事は、退去から6か月以内に行う必要があります。そのため、対応が早い業者を選ぶことが重要です。
退去の予定が決まったら、早めに業者に見積もり依頼をしましょう。
見積りが分かりやすく、適正価格
見積りは、工事内容や費用が明確に記載されているものを選びましょう。また、適正価格かどうかも確認しましょう。
実績が多い
実績が多い業者は、経験やノウハウが豊富で、安心して依頼することができます。また、実績が多い業者は、さまざまな物件の原状回復工事を経験しているため、対応力も高いと言えます。実績を調べるには、業者のホームページや口コミなどを参考にしましょう。
チェック体制・基準を設けている
チェック体制・基準を設けている業者は、原状回復工事の品質を保つことができるため、おすすめです。チェック体制・基準が明確に記載されている業者を選びましょう。
保証・アフターサービスがある
保証・アフターサービスがある業者は、万が一のトラブルの際にも安心です。保証・アフターサービスの内容は、業者によって異なりますので内容をよく確認してから、業者を選びましょう。
まとめ
原状回復工事は、賃貸契約の終了時に行う必要があります。原状回復工事の費用負担範囲やトラブルの可能性など、知っておくべきポイントがあります。原状回復工事を依頼する際は、対応の早さ、見積りのわかりやすさ、適正価格、実績、チェック体制・基準、保証・アフターサービスなどのポイントをチェックしましょう。