大阪 京都 神戸の賃貸原状回復工事・退去立ち合い代行。マンション空室対策、原状回復工事、内装リフォーム全般、不動産会社様向けのサポートはお任せください。
コラム

賃貸退去時の原状回復とは|費用の負担やよくあるトラブルについて解説

2023年4月19日

賃貸物件から退去する際に必要となる「原状回復」。部屋を入居時の状態に戻すという知識はあっても「どれくらい回復するのか」「費用を払わなくていいものは何か」など、不明点も多いことでしょう。

そこで今回は賃貸退去時の原状回復について知りたい方向けに、原状回復の意義や、借主・貸主それぞれの費用負担の範囲について解説。原状回復に関するトラブル例や、トラブルを防止する方法もご紹介します。

原状回復のガイドラインがある

はじめに、国土交通省より「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が公表されていることを知っておきましょう。

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、原状回復についてのトラブルを未然に防ぐために、一般的な基準を明記したものです。

示された基準は、貸主が借主と原状回復について話し合う場面や、借主が原状回復に置いて適切な範囲・金額を設定する際などに活用できます。

参考: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」

賃貸退去時の「原状回復」とは

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では原状回復について、以下のように定義しています。

賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること
出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」

上記に当てはまらない損耗・毀損は「通常損耗」「経年劣化」 などと呼ばれ、借主が原状回復する必要はありません。

通常損耗・経年劣化との関係

「通常損耗」「経年劣化」 は、借主が原状回復費を負担する必要がない損耗・毀損です。そのため、混同されやすい言葉ですが、実際には以下のような違いがあります。

  • 通常損耗
    通常の生活の中でついてしまった傷や痛みを指します。一例としては、小さな壁の傷や床のへこみなどが挙げられます。
  • 経年劣化
    時間経過によって自然に発生する建物・設備の劣化を指します。一例としては、クロスや畳による床の変色なども該当します。

原状回復費は通常敷金から差し引かれる

入居時に支払う敷金は通常、原状回復に充てられるケースが多いです。

通常損耗・経年劣化のみであれば原状回復費は発生せず、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に従えば、返金されることとなります。

ただし実際には、清掃・クリーニング費が借主負担になるケースも多いです。

また、敷金を上回る原状回復が必要な場合は、追加請求される可能性があります。

なお、敷金なしの物件でも、契約によって退去時に「清掃・クリーニング費」「退去費」などが発生するケースも多いです。

借主・貸主のどちらが費用負担すべきなのか

原状回復に関するトラブルは非常に多く、国民生活センターによれば「賃貸住宅に関する相談のおよそ4割(毎年1万3,000~4,000件程度)が原状回復に関するものである」と紹介されています。

具体的には、借主・貸主のどちらが費用負担すべきかについて、トラブルとなるケースが多いです。

そこで「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考に、 借主・貸主それぞれが負担すべき原状回復費の範囲を以下でチェックしていきましょう。

  • 借主の費用負担となる原状回復の範囲
  • 貸主の費用負担となる原状回復の範囲

参考: 独立行政法人国民生活センター「住み始める時から、「いつか出ていく時」に備えておこう!-賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意-」

借主の費用負担となる原状回復の範囲

借主は「通常損耗・経年劣化」を超える範囲について、原状回復の費用負担が必要になると考えられます。「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、以下のようなケースについて賃借人負担が妥当としています。

  • カーペットに飲み物などをこぼし、手入れ不足によって発生したカビ・シミ
  • 掃除を怠ったことによって発生した冷蔵庫下のサビ跡
  • 手入れ不足による台所の油汚れ
  • クーラーの水漏れを放置したことで発生した壁の腐食
  • 清掃・手入れを怠ったことによる水回りのカビや水垢
  • 引っ越し作業で生じたキズ
  • 壁の落書き
  • タバコの臭いやヤニ
  • ペットにつけられた傷や匂い

なお、上記のように「借主が清掃・手入れを怠ったことで発生・拡大した汚れ」 については、通常損耗・経年劣化ではないと判断され、借主の費用負担となる可能性があるためご注意ください。

貸主の費用負担となる原状回復の範囲

貸主は「通常損耗・経年劣化」について、原状回復の費用負担が必要になると考えられます。「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、以下のようなケースについて賃貸人負担が妥当としています。

  • 畳の裏返し・表替え(破損などがないケース)
  • フローリングのワックスがけ
  • 家具を設置したことによるカーペットや床のへこみ
  • 家具の設置跡
  • フローリングの色落ち
  • 畳の変色
  • 冷蔵庫やテレビの後ろの電気焼け(壁面の黒ずみ)
  • エアコン設置による壁の跡や穴
  • 網戸の張り替え(破損などがないケース)
  • 部屋全体のハウスクリーニング
  • 風呂釜・浴槽の取替え(破損などがないケース) など

なお、貸主は借主と契約において特約を交わすことで、上記のようなケースでも借主負担となるケースがあります。

ただし特約を設ける際は、借主が不利とならないために「特約にすべき合理的・客観的な理由があること」「借主が通常の範囲を超えた原状回復を認識し、負担の意思表示をしていること」の要件を満たすことが望ましく、満たしていない場合は効力を争われる可能性があります。

よくある原状回復をめぐるトラブルの例

借主・貸主の間に発生する原状回復をめぐるトラブルの原因には、主に以下の3つがあると考えられます。

  • 借主・貸主の経年劣化・通常損耗への認識のズレ
  • 賃貸借契約の特約による高額請求トラブル
  • 故意か過失か・入居前からなのかの判断の難しさ

ここからは、よくある原状回復をめぐる各トラブルについて、例を交えながら見ていきましょう。

借主・貸主の経年劣化・通常損耗への認識のズレ

借主・貸主の経年劣化・通常損耗への認識のズレの例としては「借主が通常損耗だと考える箇所の修繕費を請求された」「契約書に載っていない費用を請求された」などが挙げられます。

さらに「わずかな壁紙の傷で全面張替えの費用を請求された」「インターネット工事の許可をしていないので原状回復費用が必要と言われた」 などのケースもあります。

通常損耗・経年劣化は借主が、その範囲を超えた故意・過失による損耗や劣化は貸主が原状回復することが原則です。

ただし具体的に「どの箇所に対していくら請求するか」は、貸主の判断に委ねられることも事実で、特に請求が高額となる場合はトラブルにつながるケースがあります。

賃貸借契約の特約による高額請求トラブル

賃貸借契約の特約による高額請求の例としては「改めて契約書を見直したところ、修繕やリフォーム費用は入居者負担と書かれていた」などが挙げられます。

さらに高額請求のみならず「2ヶ月分の敷金のうち、1ヶ月分は返却しない」と言った特約が盛り込まれている場合もあります。

特約は、通常損耗・経年劣化を借主に負担させたり、敷金が一部返却されないなどの可能性があるため、トラブルに発展しやすい部分と言えるでしょう。

故意か過失か・入居前からなのかの判断の難しさ

傷や汚れの判断の難しさによるトラブル例としては「入居時からの壁のクロスの破損・フローリングの傷の原状回復工事を要求された」「床や壁を汚していないのにクリーニング費用を請求された」などが挙げられます。

入居時からの傷や汚れ・不具合であると借主が訴えても、証拠がないとして貸主が認めず、解決が難しい場合もあります。

原状回復のトラブルを防止するための方法

原状回復をめぐるトラブルにはパターンがあるため、事前に対策を講じる事もある程度は可能です。最後に 借主・貸主ごとに、 原状回復のトラブルを防止するための方法を見ていきましょう。

  • 借主ができる原状回復トラブルの対策
  • 貸主ができる原状回復トラブルの対策

借主ができる原状回復トラブルの対策

借主ができる原状回復トラブルの対策には、以下のようなものがあります。

  • 契約内容を事前に確認する
  • 入居する段階で部屋の状態を貸主と共に確かめる
  • 入居中はルールを守り、定期的に掃除をするなどして部屋をきれいに保つ

契約内容についてはよく確認し、不明点や特約について、さらに明記されていない事柄についてなど、少しでも分からない点があれば、契約前に聞くようにしてください。

また、どのタイミングでできた傷・汚れ・不具合か分からなくなることを避けるために、入退去時は、貸主と一緒に部屋の状態を確認することがベターです。互いに確認し合いながら部屋の状態をチェックし、必要に応じて写真撮影などで記録しておくことも有効です。

貸主ができる原状回復トラブルの対策

貸主ができる原状回復トラブルの対策には、以下のようなものがあります。

  • 物件の確認を徹底する
  • 原状回復や特約についての契約条件をきちんと開示する
  • 物件や設備の使い方や注意事項を周知させる

物件の確認の徹底については「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に掲載されている「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト」などを活用すると便利です。

入居前に、借主・貸主の双方で、部屋の各部位の損耗箇所をチェックしておくと良いでしょう。

まとめ

2020年4月1日に改正民法が施行され「通常の損耗や経年変化に関しては原状回復義務は課せられない」ことが明確に規定されました。

このような内容は以前から「東京ルール」として明確化されていましたが、東京都内に限定されていたため、全国的なトラブル解消には至りませんでした。しかし、法改正により、原状回復・敷金返還義務などについてのトラブル減少が期待されるでしょう。

それでも、現状回復に関するトラブルが発生した場合は、お住まいの自治体や、消費者ホットライン(188)などに相談することをおすすめします。