店舗の原状回復工事の費用相場|退去時の解体工事費用の相場
2023年6月21日
賃貸で店舗を運営している場合、退去のタイミングで原状回復工事を求められることが一般的です。店舗の原状回復の範囲は居住用賃貸とは異なり、また、店舗の大きさや仕様・使用期間・契約内容などによって、かかる時間や費用が変わることも理解しておきましょう。
そこで今回は賃貸店舗の原状回復工事について解説。 工事の内容や費用相場、起こりやすいトラブルと対策法についてもご紹介します。
店舗の原状回復工事とは
店舗の原状回復では、居住用物件の原状回復よりも多くの工事が必要になると考えられます。
居住用物件は、故意に汚したり傷つけたりせず、 定期的に掃除をするなど一般的な使用をしていた場合、通常は原状回復工事の負担があまりありません。
一方、店舗の場合は、業種やお店のカラーに合わせて、内装・外装・設備を変更もしくは追加することが一般的です。
退去に際しては、内装・外装・設備を、変更もしくは追加する前の状態(契約時の状態)に戻す必要があり、居住用物件よりもはるかに多くの工事が必要となります。
店舗の原状回復工事の内容
店舗の原状回復に際しては、 具体的に以下のような工事が必要になります。
- 汚れや劣化した箇所の修繕・修復
- 設置した設備や機器の撤去
汚れや劣化した箇所の修繕・修復
店舗の原状回復における汚れや劣化した箇所の修繕・修復の例は、以下の通りです。
- ガス管や電気配線の修復
- 照明の交換(*元々新品で備え付けてあった場合)
- タバコや油などで汚れた壁紙の張替え
- ペンキの塗り直し
- 損傷した床材の張替え
なお、どのような修繕・修復が必要かは、契約内容によって異なります。
設置した設備や機器の撤去
店舗の原状回復においては、以下のような設備・機器を撤去する必要があります。
- カウンター
- 冷暖房設備
- テーブル・椅子
- 冷蔵庫
- 調理器具
- ショーケース
- 看板
上記の設備・機器については、業者への買い取り・処理を依頼することが一般的です。修繕・修復で廃棄物が発生した場合もきちんと処理するようにしてください。
なお、契約時から付いていた設備・機器の撤去は不要です。
店舗の原状回復工事費用の相場
店舗の原状回復工事費用の相場は、以下の通りです。
- 小規模店舗(30坪以下)の坪単価:およそ2万円
- 中規模店舗(31~50坪)の坪単価:およそ3万円
- 大規模店舗(50坪超)の坪単価:5万円以上
一例として「40坪の店舗の原状回復工事費用」を考えると、およそ120万円となります。
ただし上記はあくまでも目安であり、様々な要素によって、費用が大きく変わる可能性があります。
例えば、店舗の破損・消耗を少なく、クリーンな状態で保っていると、原状回復工事費用が最小限で済むことも期待できます。
一方、同じ飲食店でも焼肉店や喫煙可能な店舗、あるいはペットカフェなどの場合、汚れや臭いがつきやすく、原状回復工事費用が高額となる可能性があります。
この他、以下のような場合は、工事費用が割高となることが考えられます。
- 早朝・夜間の工事でなければならない
- 重機が入りにくい
- エレベーターが設置されていない
- 駐車場が確保できない
- 複雑な構造の配管が設置されている
店舗の原状回復範囲
店舗の退去に際しては、基本的に契約時の状態に戻す必要があります。
例えば、契約時にスケルトン状態の居抜き物件だった場合、内装を全て取り払ったスケルトン状態で引き渡すことが必要です。その際は、物件の内装を全て解体するスケルトン工事を実施します。
なお、2020年の改正民法では「経年劣化や通常使用による変化、借主の責任ではない損傷などは、借主に原状回復義務は負わない」(第六百二十一条)との内容が明記されています。
これは居住用物件のみならず、店舗などの事業用物件にも適用されると考えられますが、民法改正前の契約には適用されません。
店舗の原状回復工事費用の負担割合
民法改正前(2020年以前)の賃貸店舗の契約については、 借主がほぼ全て原状回復工事費用を負担しなければならないケースが多いです。
ただし、中には経年劣化を考慮してくれたり、限定的な負担で済む場合もあります。また特約によって、貸主側から契約解除を持ちかけられた際などに、原状回復が免除されるケースも考えられます。
具体的な原状回復の負担割合については、通常、契約書に明記されているため、その内容をよく確認しましょう。
店舗の原状回復で起こりやすいトラブルと対策
最後に、店舗の原状回復で起こりやすい以下のトラブルについて、対策方法をご紹介します。
- 原状回復義務の範囲
- 原状回復費用の金額
原状回復義務の範囲
店舗の原状回復義務の範囲は、各契約ごとに異なります。
しかし、契約書に原状回復義務の範囲が記載されていない場合、 あるいは細かく明記されていない場合などは、トラブルに発展しやすいでしょう。
その対策としては、 契約内容を事前によくチェックすることです。
特に原状回復義務の範囲が記載されていない場合などは、オーナーと話し合い、契約書へ原状回復義務の範囲を細やかに盛り込みます。
また、居抜き物件の場合、前の入居者から原状回復義務も引き継ぐケースがある点には注意が必要です。仮に、居抜き前がスケルトン物件であった場合、退去に際してスケルトン工事が必要となります。
この他、特約事項にも目を通し、疑問点・不明点があれば契約締結前に解消しておきましょう。
原状回復費用の金額
原状回復費用の金額については、相場より高額な請求となった際に、トラブルとなりやすいです。
店舗などの事業用物件については、原状回復工事の業者が指定されているケースも多く、これによって費用が高くなることがあります。
この場合は、まず詳細な工事見積書を出してもらいましょう。
その上で、過剰な工事項目(契約範囲外の工事項目)が含まれていないかや、不明点をチェックしたり、業者の変更が可能かオーナーと交渉する方法もあります。
また、物件に価値を与える可能性がある設備・機器については、オーナーとの相談・交渉により、撤去が不要となる場合もあります。 撤去が不要となったら、原状回復の範囲が狭まるため、工事費用の減額も期待できます。
まとめ
店舗の原状回復工事では、汚れや劣化した箇所の修繕・修復、設置した設備や機器の撤去などが実施されます。
居住用賃貸物件とは異なり、 経年劣化など通常使用による損耗も原状回復することが一般的です。
店舗の原状回復工事費用は、店舗の規模が大きくなるほど、坪単価も高くなる傾向があります。
店舗の原状回復では、工事の範囲や金額についてトラブルとなりやすいため、可能な限り契約締結前に疑問点・不明点を解決しておくことが得策です。
(*本記事は2023年6月中旬時点の情報を基に作成されました)