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コラム

原状回復費用など退去費用を払わない方法はある?払えないときの対処法も

2023年7月25日

賃貸物件から退去する際、トラブルになりやすい原状回復費用。例えば、高額請求を無視して払わないと裁判を起こされる恐れもあるため、 きちんとした対応が必要です。

そこで今回は「退去費用を払わない方法があるか」といった疑問について解説。 敷金と原状回復費用の関係、高額請求された際の対処法、減額交渉するために知っておきたい建物・設備の経験年数、支払いができない場合の対処法などもご紹介します。

原状回復費用とは?

原状回復費用は、賃貸物件の損耗などを復旧するためにかかる費用を意味します。

これまで、原状回復は「借主が部屋を入居時の状態に戻すこと」という理解が一般的でしたが、2020年4月1日の民法改正によってその意味合いが変化しました。

具体的には、改正民法(621条)の施行により、原状回復におけるルールが明文化され「経年劣化など通常使用による損耗について、 借主は原状回復義務を負わない」ことが明言されました。

つまり借主は、入居時の状態に部屋を戻す必要はなく、故意や過度のメンテナンス不足など通常使用を超える損耗などに対してのみ、原状回復義務が発生することになります。

敷金を支払っていても原状回復費用は発生するのか?

敷金を支払っていても、原状回復費用が発生する可能性はあります。

敷金は、部屋の借り主が不動産会社やオーナーに対して預ける保証金で、家賃の1~2か月分が相場です。敷金は、原状回復や賃料未払いなどに対する補填に充てられます。

そして、原状回復費用が預けた敷金を上回った際に、不足分の費用が請求されることになります。

自費で室内の原状回復を行ってもいいのか?

原状回復費用の高額請求を避けるために、事前の工事を検討する方もいるかもしれません。しかし、借主が自費で室内の原状回復を行うことは、基本的にしない方が良いでしょう。

その理由としては「原状回復義務のない部分まで修復してしまう」「貸主が考える原状回復とは異なる状態にしてしまう」などの恐れがあるためです。

例えば、貸主がグレードアップ工事を考えていた場合、借主が原状回復を実施してもさらに工事が必要となるため、あまり意味がありません。

賃貸物件からの退去の際、原状回復費用の高額請求が問題となるケースがあることも事実ですが、事前に原状回復工事を実施するのではなく、実際に高額請求されてから必要な対処を行うと良いでしょう。

高額な原状回復費用を請求されたときの対処法7つ

原状回復費用を高額請求されたときの対処法には、以下の7つがあります。

  • 支払いを保留にする
  • 請求書の明細を確認する
  • 原状回復費用が必要な損傷か確認する
  • 賃貸の契約書を確認する
  • リフォーム会社へ相談する
  • 弁護士に相談する
  • 専門の窓口に相談する

ここからは、各対処法の詳細について見ていきましょう。

支払いを保留にする

請求金額が高額な場合、支払いをすぐに行わず、保留すると良いでしょう。

具体的には、貸主側に請求明細の提出を依頼します。これにより、原状回復費用が高額な理由を精査する時間が作れます。

原状回復費用が敷金を上回る場合、貸主は借主に対して適切な説明をしなければならず、支払いだけを要求することはできません。

なお、貸主側に請求明細の依頼などをせず、ただ単に費用を支払わないと、貸主側から訴訟を起こされる恐れもあるため避けましょう。

請求書の明細を確認する

貸主側から請求明細が提出されたら、その詳細を確認します。

具体的には「貸主の負担箇所」「借主の負担箇所」を分けていき、本来は貸主が負担すべき箇所が請求されていないかチェックしてください。

貸主が負担すべき箇所が請求されていた場合、 貸主との交渉によって原状回復費用の減額が期待できます。

原状回復費用が必要な損傷か確認する

請求金額が高額な場合、借主側の落ち度が原因となっている可能性も考えられます。

具体的に「通常使用の範囲(経年劣化など)を超えた損耗」については、借主が原状回復義務を負わなければなりません。

経年劣化など通常使用の範囲を超えた損耗の例は、以下の通りです。

  • 喫煙によって壁紙に付着したヤニ
  • 雨の吹き込みによって生じた壁紙や畳の変色
  • エアコンの水漏れを放置したことで生じた壁紙や畳の変色・腐食
  • 落書きなどの故意の破損
  • 著しい手入れ不足が原因のキッチンの油汚れ  など

賃貸の契約書を確認する

請求金額が高額な場合、賃貸契約書の確認も重要です。

具体的には、賃貸契約書の原状回復費用についての規定を確認した上で、規定と請求額があまりにも 見合わなければ減額交渉をできると考えられます。

リフォーム会社へ相談する

リフォーム会社への相談は、請求された原状回復費用の妥当性を判断する助けになります。

また、リフォーム会社に相談するだけでなく、複数のリフォーム会社に見積もりを出してもらうことで、 費用相場を確認する方法もあります。

原状回復の請求額が、出された見積もりを大幅に上回る場合、貸主側と減額交渉すると良いでしょう。

弁護士に相談をする

弁護士への相談は、適切な原状回復費用を教えてもらえるほか、高額なリフォーム代・ハウスクリーニング代の請求といった事案にも対応してもらえます。

さらに、原状回復費用をめぐって貸主側とトラブルになったり、訴訟に発展した場合なども弁護士に相談・依頼するのが良い方法と言えるでしょう。

「どの弁護士に相談したら良いかわからない」「経済的な理由で法律相談するのが難しい」と言った場合は法テラス(日本司法支援センター)の利用が最適です。

専門の窓口に相談をする

原状回復費用をめぐるトラブルは「消費生活センター」「消費者ホットライン」「不動産窓口」などで相談することが可能です。

相談料は基本的にかからず、適切なアドバイスをもらうことを期待できます。

建物や設備の経過年数により減額される可能性がある

建物や設備の価値は、経過年数によって減少します。

そして、経過年数によって減少した価値(経年劣化)は、貸主の原状回復義務に当たらない旨が、改正民法(民法621条)に規定されています。

ここからは、建物や設備の経過年数によって、原状回復費用が減額される可能性について見ていきましょう。

建物や設備の経過年数による減額とは

建物や設備には耐用年数があり、年数を減るにしたがって価値が下がります。

原状回復においては、この経過年数を考慮した上で、貸主・借主の負担割合を算出することが適当です。

つまり、経過年数が多いほど、原状回復における借主の負担割合も少なくなります。

借主は「家賃を通じて、経年劣化に対する費用をすでに支払っている」と解釈できるため、経過年数を考慮しない請求は妥当性を欠いていると言えるでしょう。

実際に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(国土交通省)」においても、建物や設備の経過年数を考慮して、原状回復費用を算出することが推奨されています。

建物の耐用年数について

原状回復費用の算出に使われる、建物の主な耐用年数は以下の通りです。

  • 軽量鉄骨住宅(骨格材肉厚3mm以下):19年
  • 木造住宅:22年
  • 住宅用の鉄骨造・重量鉄骨造:34年
  • 住宅用の鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート:47年

原状回復費用を払わない方法3つ

あまりに高額な原状回復費用については、請求通りに支払わなくても良いケースも少なくないと考えられます。具体的には、以下3つの方法を確認・検討してください。

  • 約書に規定がなければ支払いを拒否できる可能性がある
  • 民事調停手続を考える
  • 少額訴訟手続を考える

契約書に規定がなければ支払いを拒否できる可能性がある

賃貸契約書に、原状回復の範囲や詳細が明確に規定されていない場合、 経年劣化など通常使用による損耗については、支払いが拒否できる可能性が高いです。

ただし、賃貸契約書に原状回復の範囲や詳細が明記され、適切な費用の範囲内で「経年劣化など通常使用による損耗の原状回復義務を借主が負う」と規定されている場合、借主に支払い義務があると考えられます。

民事調停手続を考える

貸主が原状回復費用の話し合いに応じてくれないケースでは、 民事調停を実施する方法があります。

民事調停では、裁判官・調停委員が同席した上で、トラブルの解決を目指します。

裁判のように 勝敗をつけるのではなく、 話し合いによる円満な解決を目指す点が大きなポイントです。

調停は2〜3回ほど実施され、3ヶ月以内に解決するケースが多いです。

少額訴訟手続を考える

民事調停で話し合いがまとまらなかった場合は、少額訴訟手続きを実施する方法があります。

少額訴訟は、少額(60万円以下)の金銭支払いに関する訴訟です。

民事調停手続きよりは手数料はかかるものの、例えば、退去費用が10万円であれば手数料1,000円程度と安価です。

少額訴訟は1回実施され、裁判当日に判決が出て、問題を解決することができます。

原状回復費用の支払いができないときの対処法3つ

原状回復費用が妥当な金額の場合、あるいは民事調停・少額訴訟などの結果、借主の原状回復の負担費用が決定した場合などは、支払いを拒否することはできません。

経済的な理由などで支払いが難しい場合は、放置せず、以下のように適切な対応を取ることが重要です。

  • 保証会社や管理会社に相談する
  • 原状回復費用の分割払いを交渉する
  • 金融機関からお金を借りて対応する

保証会社や管理会社に相談する

原状回復費用の請求を放置すると、数回の注意や督促を経て、連帯保証人に連絡が入ります。

そして、連帯保証人が原状回復費用を支払えない場合は、民事裁判を起こされる可能性があります。

このようなトラブルを避けるためには、 先方にきちんと連絡・相談することが大切です。

少なくとも、保証会社や管理会社から連絡を受けた時点で、事情を説明し、支払いについての相談をしましょう。

原状回復費用の分割払いを交渉する

保証会社や管理会社との相談に際しては、分割払いについて交渉してみましょう。

通常、原状回復費用は一括払いですが、事情を考慮した上で分割払いに応じてくれるケースがあります。

「まとまった費用の一括払いは難しいものの、 月々少しずつなら支払える」という場合は、分割払いの交渉が得策です。

金融機関からお金を借りて対応する

原状回復費用の捻出が難しい場合・捻出できても生活に支障が出る場合などは、 金融機関からお金を借りて対応する方法もあります。

具体的には、銀行や消費者金融のフリーローン・カードローンなどが該当します。

利用する際は、きちんとした返済計画のもと、 無理のない範囲で利用することが重要です。

他に複数の債務を抱え、身近に頼れる人がいない場合などは、 債務整理・自己破産を検討した方が良いケースもあるため、1度法律の専門家に相談すると良いでしょう。

原状回復費用のトラブルを防ぐコツ3つ

最後に、原状回復費用のトラブルを防ぐコツとして、以下の3つをご紹介します。

  • 部屋の損傷に注意して入居生活を送る
  • 契約書に特約がないか確認をする
  • 敷金ゼロの物件なら貯金をする

部屋の損傷に注意して入居生活を送る

原状回復費用が高額になることを防ぐためには「部屋をきれいに維持すること」が重要です。具体的には、以下のような注意点が挙げられます。

  • 水回りを含め、部屋を定期的に掃除する
  • ゴミを放置しない
  • 部屋の中で喫煙しない
  • ペット不可の物件でペットを飼わない
  • 雨漏り・エアコンの水漏れなどのトラブルは管理会社などにすぐ連絡する
  • 引越し作業や家具の搬入で壁や床を傷つけないようにする

また、入居時に管理会社とともに、部屋の損傷や汚れを確認し、記録しておくことで、退去時に修繕費用を請求される心配がなくなります。

契約書に特約がないか確認をする

経年劣化など通常使用の範囲内の損耗について、借主は原状回復義務を負いませんが、特約がある場合はその限りではありません。

つまり、賃貸契約書に「借主が通常の範囲を超える原状回復を実施する」旨が明記されており、 宅建士などから事前に説明を受けていた場合、借主はその費用を負担しなければならない可能性があります。

賃貸契約に際しては、必ず特約の有無を確認し、 その内容になって納得できない・特約内容を変えることができない場合は、契約を見送った方が良いでしょう。

敷金ゼロの物件なら貯金をする

敷金のある物件では、敷金でカバーできない原状回復費用のみ請求されることになります。

一方、 敷金ゼロの物件は、退去時に敷金などのカバーがないため、まとまった原状回復費用を請求される可能性があります。

敷金ゼロの物件を借りる際は、 退去時の原状回復費用の請求を見越して、あらかじめまとまった金額を貯金しておきましょう。

まとめ

適正な範囲で原状回復費用が請求された場合、支払いを拒否することはできません。

仮に、適正な範囲を超えた高額請求がされた場合も、支払いを放置すると民事裁判を起こされる可能性があるため、まずは先方に請求明細の提出を求め、支払いを保留します。

その間に賃貸契約書の確認をおこない、専門家・窓口などに相談しましょう。

賃貸契約書の確認や相談の結果「賃貸契約書に原状回復についての詳細な規定がなかった」「建物・設備の経年劣化が考慮されていなかった」などが判明したら、原状回復費用が減額できる可能性があります。

一方、貸主側が交渉に応じなければ、民事調停 ・少額訴訟などの手続きを検討しましょう。

なお、原状回復費用の支払いが難しい場合は、きちんと保証会社・管理会社に相談することが重要です。その上で分割払いの交渉をしたり、金融機関からお金を借りるなどして対応してください。