事務所・オフィスの引っ越し(移転)に必要な費用とは?金額を抑える8つの方法
2023年7月25日
事務所・オフィスの引っ越し(移転)には、様々な名目の費用がかかります。これらの費用を知っておくことは、引っ越し費用を抑える上でも役立ちます。
今回は、事務所・オフィスの引っ越しにかかる費用の名目や相場を詳しくご紹介。引っ越し費用を抑える8つの方法についても解説しています。
事務所の引っ越しにかかる費用とは
事務所・オフィスの引っ越し(移転)では、引っ越し費用ほか、原状回復工事費用・不動産取得費用・新オフィスの設備内装費用などがかかります。
ただし 引っ越しに伴って発生する費用は企業ごとに異なるため、 一般的な相場はありませんが、会社の規模が大きくなるにつれ高額となる傾向にあります。
事務所からの引っ越しに必要な3つの費用
事務所・オフィスの引っ越し(移転)には、主に以下3つの費用が発生します。
- 引っ越しを行う費用
- 引っ越しにともなう不用品を処分する費用
- 解約予告に基づく退去費用
ここからは、各費用の詳細や目安について見ていきましょう。
引っ越しを行う費用
事務所・オフィスの引っ越しでは、事業で使用するパソコン・書類・イス・デスクなどの運搬作業が発生します。
引っ越し費用は「3万円×社員数」が目安となり、例えば、社員50名の会社であれば「3万円×50名」で、およそ150万円かかる可能性があります。
ただし、運搬する機材・備品が多かったり、特殊な機材・備品の運搬が必要な場合には、 さらに費用が高額になると考えられます。
引っ越しにともなう不用品を処分する費用
引っ越しにともなう不用品を処分する費用は、2t車の手配で7~8万円、4t車の手配で12~15万円ほどが目安となります。
なお、産業廃棄物の処理に際しては、 あらかじめ産業廃棄物中間処理業者や収集運搬業者と契約した上で、 マニフェスト(参拝の管理と不法投棄を防ぐための管理票)が必要になるため、 早めに準備・手配することが ベターです。
また、産業廃棄物ではない不用品については、リサイクル業者に買い取ってもらえる可能性もあるため、1度査定をしてもらうと良いでしょう。
解約予告に基づく退去費用
事務所・オフィスの退去に際しては、3〜6ヶ月前の解約告知が必須です。
もちろん、解約告知をしてから実際に退去する日までの家賃はかかり続けることになります。
なお、解約告知した期間よりも短期間で退去する場合、 違約金が発生するため 注意が必要です。
原状回復工事を行うための費用
事務所・オフィスの引っ越し(移転)に際しては、これまで借りていた物件の「原状回復工事」が必要です。
ここでは、原状回復工事の意味と費用相場について見ていきましょう。
原状回復工事とはなにか
原状回復工事は、退去する事務所・オフィスを入居時の状態に戻す工事です。
居住用賃貸物件の場合、経年劣化など通常使用による損耗に対して、 借主に原状回復義務はありませんが、事務所・オフィスなどの商用物件の場合は、借主が原状回復しなければならないケースが多いです。
通常、原状回復の範囲・内容・工事区分については賃貸契約書などに記載があるので、契約時、そして退去前にきちんと確認してください。
原状回復工事を行う費用
原状回復工事の費用相場は、事務所・オフィスの規模によって異なります。
東京23区で、50坪以下の商用物件に対して原状回復工事を実施する場合、坪単価は3万円前後と言われています。
ただし、タワービル や50坪以上の大型ビルの場合、坪単価が4~5万円程度になる可能性があり、なおかつ、ビルのグレードや立地によっては10〜20万円程度かかるケースもあります。
この他、工事内容によっても原状回復工事費用は変わってくるため、業者にきちんと見積もりを出してもらうことが重要です。
不動産の取得に必要な6つの費用
事務所・オフィスの引っ越し(移転)に際して、新しい事務所オフィスの不動産を取得する場合、主に以下6つの費用がかかります。
- 敷金・礼金
- 前家賃
- 仲介手数料
- 火災保険料
- 保険委託金
- 事務所の移転に伴う書類の作成費用
ここからは、各費用の詳細について見ていきましょう。
敷金・礼金
敷金とは、 あらかじめ貸主に対して預けておくお金です。
家賃滞納・原状回復費の未払いなどが発生した際に使用するお金で、 担保の意味合いがあります。
居住用賃貸の場合、敷金の相場は家賃の1〜2ヶ月程度が目安ですが、 近年では敷金なしで募集しているケースも少なくありません。
事務所・オフィスなどの商用賃貸の場合、敷金の相場は家賃の4〜8ヵ月分が目安ですが、 50坪を超える大規模事務所などでは家賃の6~12ヵ月分必要となるケースもあります。
また、礼金とは、貸主に対する謝礼金です。
敷金は、原状回復費用に充てられ、原状回復費用が敷金を下回れば返還されるケースもある一方、 礼金は原状回復費に充てられたり、返還されることはありません。
礼金は、居住用賃貸・商用賃貸を問わず、家賃の1〜2ヶ月分程度が相場です。
前家賃
前家賃とは、 賃貸契約時に翌月分の家賃を支払うことで、初期費用として請求されるケースが一般的です。
具体的には、賃貸契約時に「当月分+翌月分」の家賃を支払い、以降は1ヶ月ごとに翌月分に充てられる家賃を支払うことになります。
このように、前家賃は単なる前払いであるため、 家賃を多く払って損をするといったことはありません。
なお、前家賃の金額は、賃貸物件への入居時期によって異なります。例えば、月の1日ではなく、中途半端な日付から入居するケースでは「当月分の日割り家賃+翌月分」がかかります。
仮に、 7月20日に入居する場合は「7月20日〜7月31日の日割り家賃+翌月分」を支払うことになります。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産仲介業者に対して支払われる費用です。
不動産仲介業者を通して物件を借りた場合に発生します。
仲介手数料は「賃料の1ヶ月分」が一般的ですが、 近年では賃料0.5ヶ月分、あるいは無料とする業者も存在します。
火災保険料
火災保険料は、 賃貸契約に際して加入しなければならない保険料です。
火災のみならず、 契約内容によっては水漏れによる損害なども保証されるケースがあります。
火災保険料は「2~3万円程度(2年契約)」が一般的ですが、 契約内容によって費用が変わるため、きちんと保障内容・保障範囲などをチェックしておいてください。
保証委託金
保険委託金は、保証会社への委託に際して発生する費用です。
借主の家賃滞納などに対して、保証会社が支払いを立て替えるため、貸主側のリスク対策になります。
「連帯保証人がいない」「収入が不安定」「定職に就いていない」と言った場合に、保証会社の利用を求められる可能性があります。
保証委託金は「賃料の0.5~1ヵ月分程度」が相場です。
事務所の移転に伴う書類の作成費用
事務所の移転に際しては、法務局・税務署・社会保険事務所などへの提出書類を作成しなければなりません。
自社で作成する場合、費用はかかりませんが、 行政書士などの専門家に依頼する場合「10~25万円程度」かかると考えられます。
事務所の設備に必要な4つの費用
新しい事務所・オフィスに関しては、主に以下4つの費用がかかります。
- 内装工事をする費用
- 什器類にまつわる費用
- ネットワーク工事をする費用
- 事務所の広告・告知費用
内装工事をする費用
一般的な事務所・オフィスの内装工事では、坪単価10万円が目安となります。
おしゃれなデザインにする場合など、 デザインにこだわるほど費用は高額になる傾向です。
ただし、内装工事の費用は、業者ごとに大きく異なるため、 比較的安価に希望のデザインが実現するケースもあります。
什器類にまつわる費用
什器(じゅうき)は、事務所・オフィス・店舗で使用する備品や道具を意味します。
具体的には金庫・書棚・パーテーション・デスク・キャビネット・商談ブース・受付カウンターなどが該当します。店舗の場合は、ショーケース・商品陳列棚・レジ台・ワゴンなどが当てはまるでしょう。
什器類の費用は、新たに購入する什器類の数・種類などで異なりますが、5~30万円程度は見ておくと無難です。
ネットワーク工事をする費用
ネットワーク工事では、電話・インターネット・電気などの整備を実施します。
費用相場は「従業員1人につき5万円程度」からとなります。
大きなサーバーの設置や厳重なセキュリティなどを求める場合は、さらに費用が高額となります。
事務所の広告・告知費用
事務所・オフィスの引っ越し(移転)に際して、広告や告知をする場合、これにも費用がかかります。
具体的には「従業員1人につき1〜2万円程度」が目安となります。
事務所の引っ越し費用を抑える8つの方法
一般住宅の引っ越しと比較して、事務所・オフィスの引っ越し(移転) には多額の費用がかかります。そこで、引っ越し費用を少しでも抑えるために、以下8つのような方法を実践してみましょう。
- 引っ越しの計画を早めに行う
- 見積もりは複数の業者から取る
- 専門のコンサルティングに相談をする
- 工事を依頼する業者は絞る
- 引っ越し先のビルグレードや広さを見直す
- セットアップオフィスや居抜きオフィスを選ぶ
- フリーレント交渉を検討する
- 備品の再利用をする
引っ越しの計画を早めに行う
引っ越しの準備は、貸主側に解約通知をしなければならない半年前には始めると良いでしょう。
事務所・オフィスの引っ越しは、引越し業者選び・不用品の選別・移転先の事務所・オフィス探しなどすべきことが多いです。
時間のない状態で業者に依頼すると費用が余計にかかったり、期間内に作業や工事が終わらず余計な 賃料が発生する恐れもあります。
引っ越し費用を抑えるためには、計画的に移転作業を進めることが重要です。
見積もりは複数の業者から取る
引っ越し業者選びでは、複数の業者より相見積もりを取ることで価格競争が起き、費用を抑えることが期待できます。
ただし、値段だけで選ぶとトラブルにつながるなどして、かえってトータルコストがかかる恐れもあるためおすすめできません。
「必要なサービスが用意されている」「実績があり信頼できる」など、ニーズに合致してなおかつ予算内に収まる 業者を利用するようにしましょう。
専門のコンサルティングに相談をする
事務所・オフィスの引っ越しを考えているものの「人員や時間を割く余裕がない」という企業は、オフィス移転専門のコンサルティング業者に相談する方法があります。
オフィス移転専門のコンサルティング業者は、必要に応じて物件探し・貸主側との条件交渉・引っ越しのサポートなどを担うことができ、自社に余力がなくても円滑な移転を実現します。
また、自社で探すよりも、好条件かつリーズナブルな物件が見つかる可能性もあります。
提供されるサービスや業務の範囲などは業者ごとに異なるため、 自社のニーズにあったコンサルティング業者に相談しましょう。
工事を依頼する業者は絞る
引っ越しに際して、原状回復工事・内装工事を依頼する場合、業者はできるだけ少なく絞ることが おすすめです。
工事の各工程ごとに専門業者を依頼すると、仕上がりや費用面で安心かもしれませんが、スケジュール管理や各業者とのやり取りが煩雑になります。
スケジュール管理や業者とのやり取りをサポートする業者に依頼する方法もありますが、 トータルでは結局多くの費用がかかります。
特に忙しい企業などは、はじめから一括工事が可能な業者を選ぶことも検討しましょう。
引っ越し先のビルグレードや広さを見直す
引っ越し先のビルのグレードや物件の広さを見直すことで、引っ越し費用が削減できる可能性があります。
グレードの高いビルは、家賃・敷金・仲介手数料・原状回復費用などが高額な傾向ですが、ビルのグレードを下げることでそれらの費用を抑えることが期待できます。
また、従業員や業務内容に対して、不必要に広い物件を借りると、かかるコストも増大します。コストを抑えたい場合は、適切な広さの物件を選ぶようにすると良いでしょう。
セットアップオフィスや居抜きオフィスを選ぶ
セットアップオフィスは内装設備がはじめから備え付けられた物件で、居抜きオフィスは以前の借主の内装設備や家具を引き継いだ物件を指します。
これらの物件を選ぶことで、改めて内装設備を整える必要がなく、 内装設備の工事費用もかからないため、移転費用を大幅に抑えることも期待できます。
フリーレント交渉を検討する
フリーレントとは、 オフィスを賃貸する際、一定期間の賃料を無料にする制度です。
借主は家賃の二重払いなどのリスクを避けつつ、費用負担を抑えることができ、 貸主は空室率改善が期待できるため双方にとってメリットがあります。
具体的には、交渉次第で1~3ヵ月ほどのフリーレントが実現する可能性があります。
備品の再利用をする
引っ越しと同時に備品を新品購入する場合、必要な費用が増大する可能性があります。
一方、 まだ使用できる備品・機器などについては、引っ越し先でも再利用することで費用を抑えることが可能です。
また、購入ではなくレンタル・リースを利用することで、イニシャルコストを抑えることができます。
まとめ
事務所・オフィスの引っ越しでは、引っ越し費用・不用品の処分費用・退去費用の、3つの費用がかかります。
さらに、新しい事務所・オフィスについては、不動産取得費用・ 内装や設備の費用・広告や告知の費用などがかかります。
オフィスの規模や社員数が多いほど、引っ越し費用が高額になる傾向です。
事務所・オフィスの引っ越しを抑えるためには、早めに計画を立て、複数業者から相見積もりを取ることが有効です。
その上で必要に応じて、コンサルティング業者への相談、引っ越し先のグレードや広さを見直し、セットアップ・居抜きオフィスを選ぶ、フリーレント交渉することなども検討してみましょう。
備品を新調するのではなく再利用が可能であれば、費用を大幅に抑えることも期待できます。