大阪 東京 京都の賃貸原状回復工事・退去立ち合い代行。マンション空室対策、原状回復工事、内装リフォーム全般、不動産会社様向けのサポートはお任せください。
原状回復

オフィスの原状回復工事はどこまでやるの?相場や適範囲を紹介

2022年12月6日

オフィスの引越しにあたり、どこまで原状回復すべきか知りたい方もいるのではないでしょうか。オフィスは、100%の原状回復を求められることが多いため、しっかりと内容を把握しておくことが大切です。

そこで今回は、原状回復工事の概要や費用相場、費用を抑えるポイントなどを紹介します。さらに、工事期間や大まかなスケジュール、トラブルを防ぐポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。

法律で定められた原状回復の範囲

2020年の法改正によって民法の適用範囲が変更されたことで、原状回復義務が賃貸住宅と同じように課されました。

(賃借人の原状回復義務)

第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

引用:民法

この義務が発生するのは、借主の故意・過失や、管理者の注意義務の怠慢、もしくは通常使用を超えるような使用で建物や設備を損耗・毀損し、建物価値を減少させたときです。

しかし、建物・設備が自然に劣化・損耗する「経年変化」や、通常の使用で発生する「通常損耗」に関しては、基本的に借主の責任は問われません。例えば、経年変化には太陽光による壁紙の変色など、通常損耗にはタバコの煙による壁紙の黄ばみなどが該当します。

また、上記の法律が適用されるのは法改正後の契約のみで、それ以前の契約には改正前の民法が適用される点もポイントです。

オフィスは100%の原状回復を求められるケースが多い

法律やガイドラインがある一方、オフィスやテナントの場合は、契約締結時に100%の原状回復を条件にされる傾向です。事業者が利用した場合は、借主の事業内容や従業員数などによって損傷状態が変わり、場合によっては多額の費用が発生するおそれもあるためです。

上記を踏まえ、契約内容を改めてチェックし、復旧すべき範囲を確認しておく必要があるでしょう。代表例としては、主に以下の項目が挙げられます。

  • 入居後に配備した電気や電話配線の撤去
  • 壁紙・床板・カーペットの張り替え
  • 天井の張り替え・再塗装
  • 天井・窓・壁・床の清掃
  • ネオン・看板・床下配線の撤去
  • 照明の撤去・回復
  • その他、増設設備などの撤去

以下の項目では、原状回復の必要性について、2つのポイントで紹介します。

スケルトンまで原状回復を行う必要はある?

原状回復する際、スケルトン状態まで復旧するか否かは、契約内容によります。例えば、札幌地方裁判所の判例では、賃貸借契約に「本物件を返還明渡す状態はスケルトンとする」という規定があったにもかかわらず、借主が工事を実施せずに契約終了したために損害賠償を請求されています。

この判例では、契約書に明記されている義務を果たしていないことから損害賠償請求事件にまで発展し、結果として「義務の不履行に基づく損害賠償」が一部認容されました。しかし、契約書に何も記載がない場合は、基本的にスケルトン状態まで復旧する必要はありません。

参考:裁判例結果詳細

少人数オフィスは賃貸住宅と同じ原状回復が適用されることも

マンションを活用した少人数オフィスなどの場合、賃貸住宅と同程度の原状回復が適用されるケースがあります。具体例として、マンションの1室を事務所に使っていた借主が、敷金の全額返還を認められた判例もあります。

もともと借主は、面積34.64㎡のマンションを事務所用に借り受ける際、敷金25万円あまりを払っており、契約解除時に敷金の全額返還を求めました。しかし貸主は、事務所として貸しているため「契約締結時の原状に回復させる」という条項が適用されると主張。

これを受けた裁判所は、実質的に居住用の賃貸借と変わらないため、敷金の全額返還を認める判決を下しました。このように、マンションなどを利用していたときは、賃貸住宅と同じレベルで扱われるケースもあるのです。

参考:小規模事務所の賃貸借において、原状回復費用は

ガイドラインにそって算定すべきとされた事例

原状回復の目安となる費用相場

原状回復工事にかかる費用相場は、オフィスの規模や使用状態によっても変わります。一般的に、小規模のオフィスは一坪あたり3~5万円程度、中規模のオフィスは一坪あたり5~7万円程度、大規模のオフィスは一坪あたり8~12万円程度です。

オフィスの規模別の総額目安は、以下のとおりです。

  • 小規模(30坪の場合):90万円~150万円
  • 中規模(70坪の場合):350万円~490万円
  • 大規模(100坪の場合):800万円~1,200万円

上記のとおり、総額目安は規模や坪数によって大きく異なります。

オフィスの原状回復費用を安く抑えるポイント

原状回復する際は、業者によって費用が違うおそれがあります。それを踏まえたうえで、費用を抑えるためのポイントを4つ見ていきましょう。

指定業者以外から見積もりを取る

原状回復工事の見積もりを取る際は、なるべく貸主の指定業者以外からも見積もりを取ることが大切です。なぜなら、指定業者とそれ以外の業者から複数の見積もりを取ることで、費用目安の比較が可能となり、より安い業者へ依頼しやすくなるためです。

ただし、賃貸借契約書に「原状回復工事は、指定業者のみに依頼可能」など明記されている場合、それ以外の業者には頼めないので注意しましょう。また、せっかく施工しても、賃貸借契約書に規定された項目をクリアできていないと、追加で工事が発生するケースもあります。

契約書の規定内容を満たせるように、見積もり段階でしっかりと確認しておかなければなりません。

貸主と交渉する

場合によっては、原状回復すべき範囲や業者に関して、貸主と交渉してみましょう。というのも、オフィスの汚れや損傷の具合はケースバイケースのためです。

例えば、短い期間しか借りていないケースでは、目立った損傷がなく簡単なクリーニングでもよい可能性があります。併せて、業者の指定がある場合であっても、それ以外の業者に依頼して問題ないか確認しておくとよいでしょう。

また、指定業者以外の工事が認められないときは、その業者に価格交渉してみるのも方法の一つです。

居抜き募集をしてみる

オフィスの設備や増設部分などをそのままに、居抜き物件として利用者を募るという方法もあります。もしも居抜きで引き渡せれば、簡単なクリーニングで済むため、費用を抑えやすくなります。

ただし、居抜き募集をかける際は、事前に貸主へ相談して承諾をもらっておかなければなりません。また、内装や設備の状態によっては、次の借り手が見つかりにくいケースもある点に留意しておきましょう。

専門業者やコンサルに相談してみる

原状回復工事に関して、専門業者やコンサルタントへ相談するのも、費用を抑えるために大切なポイントです。先述のとおり、賃貸借契約書に規定されている原状回復の範囲を怠った場合、裁判に発展する事例もあるためです。

事前に専門業者やコンサルタントへ相談しておくことで、トラブルを未然に防げるうえ、結果的に費用を抑えやすくなるでしょう。

また、業者によっては「中間マージンで費用が増えている」「必要箇所以外の工事も含まれている」などの理由で、費用が割高になっているケースもあります。そのため、信頼の置ける専門業者やコンサルタントへ相談して、適正価格で工事が行われるようにすることもポイントです。

オフィスの原状回復に必要な工事期間

原状回復に必要な工事の期間は、オフィスの規模によって以下のように違いがあります。

  • 小規模(30坪程度):2週間程度
  • 中規模(100坪未満):2週間~1ヵ月程度
  • 大規模(100坪以上):1ヵ月程度

ただし、工事期間は内装の損耗状態などで変わるため、目安以上の期間を要するケースもあります。移転などが決まり次第、早めに業者へ相談することが大切です。

オフィスの原状回復を行うときのスケジュールや流れ

ここからは、オフィスの原状回復を行う主なスケジュールや流れについて、時系列で紹介します。大まかな流れは、以下のとおりです。

  1. 貸主にオフィス・テナントの解約予告を伝える
  2. 物件の契約内容を確認する
  3. 複数の業者に見積もりを依頼する
  4. 新しいオフィスの入居時期を確認する
  5. 選定した業者へ正式に発注する
  6. 新しいオフィスへ引越す
  7. 工事状況を定期的に確認する
  8. 中間検査を実施してもらう
  9. 工事完了部分をチェックする
  10. 貸主、管理会社の確認後、引き渡す

それでは、時系列別にスケジュールや流れを見ていきましょう。

6ヵ月前

まず6ヵ月前にしておくべきこととして、以下の項目が挙げられます。

  • 現オフィスの解約を伝える
  • 契約内容を確認する
  • 複数の業者に見積もりを依頼する(相見積もり)
  • 新しいオフィスの入居時期を確認する

上記の中でもポイントとなるのは、契約内容を確認して「原状回復の範囲」を把握したうえで、施工業者と工事内容を擦り合わせる点です。また、見積もり内容で納得できない点があればしっかりと指摘して、見積もりを再度提出してもらうようにしましょう。

3ヵ月前

次に、3ヵ月前にしておくべき項目としては、以下が挙げられます。

  • 業者への正式発注
  • 新しいオフィスへの引越し

この時期には、見積もり内容などを検討のうえ、選定した業者へ工事を正式に発注します。なお、期間中は定期的な報告をしてもらえるように業者へ依頼し、契約内容に沿った施工が進められているか確認しておきましょう。

また、新しいオフィスへの引越しは、遅くとも着工の2週間前には開始して、スムーズに施工をスタートしてもらえる状態にしておくことが大切です。

1ヵ月前

1ヵ月前には、以下の項目を実施しましょう。

  • 工事状況を定期的に確認する
  • 中間検査を実施してもらう

工事期間の目安は、2週間~1ヵ月程度です。期間中は、進捗状況を業者から共有してもらい、契約内容に沿った施工となっているか定期的に確認しましょう。

また、中間検査を依頼することで、施工完了後に確認できない箇所も途中で確認が可能です。引き渡し後にトラブルに巻き込まれることのないよう、慎重にチェックしておくことをおすすめします。

退去日

退去日には、以下の項目を実施します。

  • 工事完了部分をチェックする
  • 貸主、管理会社から相違がないと了承を得る

業者の施工が問題なく完了しているか、契約内容から漏れがないかなどのポイントをチェックしておきます。その際、貸主と管理会社にも立ち会いのもと、工事内容に相違がないことの了承を得てから、物件を引き渡しましょう。

なお、施工が完了する前段階で確認の場を設けておけば、万一、追加工事が必要な場合も対応しやすくなります。

トラブルを起こさないためのポイント

それでは、オフィスを原状回復して、トラブルなく引き渡すためのポイントを3つ紹介します。

指定業者以外に工事を依頼できるか確認

スムーズな工事を実現するために、指定業者以外にも依頼できるか確認しておきましょう。なぜなら、指定業者以外にも依頼が可能であれば、業者の選択肢が広がるためです。指定業者の中には、費用面で融通が利かない会社もあるため、費用を抑えにくいというデメリットもあります。

業者を探す際は、以下のポイントに注意するとよいでしょう。

  • 実績がある
  • 技術力に定評がある
  • 対応が迅速・丁寧
  • ワンストップで施工してくれる

上記の中でも、自社で職人を有しており、ワンストップで施工してくれる業者を選ぶのは大きなポイントです。というのも、ワンストップで施工できる業者の場合、下請けが入ることで中間マージンを取られる心配がないためです。無駄なコストが発生しないうえ、スムーズな施工が期待できます。

工事ができる日時を管理会社に相談

オフィスのエリアや工事箇所によっては、施工の日時が指定される場合もあるため、事前に管理会社へ相談しておくことが大切です。例えば、施工時の騒音が大きいケースでは、休日のみしか作業を実施できません。

また、休日も他の入居事業者は稼働しているとなれば、施工できる日時がさらに限定される可能性もあります。日時をあらかじめ相談して、関係者のスケジュールを調整しておくことで、トラブルを未然に防いで施工を進められるでしょう。

オフィス移転の時期は繁忙期をさける

一般的に、1~3月もしくは9~12月はオフィス移転が多い傾向のため、さけることをおすすめします。仮に、繁忙期に原状回復工事を依頼しても、業者側が対応できない可能性があります。

また、5月も新体制への移行や新入社員の配属が一段落し、ゴールデンウィークを利用して工事が増える傾向のためさけたほうがよいでしょう。なるべく繁忙期をさけて依頼することで、スムーズな着工へとつながり、トラブルのない移転を実現しやすくなります。

什器・家具の廃棄費用を把握しておく

使用していた什器・家具を廃棄する場合は、費用目安を事前に把握しておきましょう。廃棄費用は、1.5トン車による引き取りで6~7万円程度、4トン車による引き取りで15万円程度が一般的です。

また、インフラ設備や間仕切りなどの「造作」については、「造作買取請求権」を行使して貸主に買い取ってもらえるケースもあります。ただし、この権利を使えるのは、「貸主の同意を得たうえで設置したもの」「次の利用者にとって便益性があるもの」など、複数の条件を満たした造作に限られます。

そのうえ、買取額は時価となるため、造作に価値がないと判断された場合は請求権を使えません。

まとめ

原状回復すべき範囲は、入居先の物件によってケースバイケースです。業者へ依頼する際は、契約内容を事前にチェックしたうえで、漏れなく施工してもらえるように注意しましょう。

また、費用を抑えるポイントとして、指定業者以外への見積もりや、専門業者・コンサルタントへの相談なども大切です。スムーズに借主へ引き渡せるように、業者へ依頼する際は早めに行動しましょう。