原状回復工事の相場は?費用を削減する方法を紹介
2022年12月27日
原状回復工事を行うにあたり、費用がどれくらいかかるのか気になる方は多いでしょう。この記事では、原状回復工事の費用の相場をご紹介するとともに、費用がかかるポイント、費用削減の方法について解説します。また、工事費用の負担義務がどこにあるのかを明確化するために重要な「工事区分」について触れます。工事区分については、借主とオーナー側との間でトラブルになりやすいので、しっかり覚えておくことが大切です。
原状回復工事とは?費用の相場はどれくらい?
まずは、原状回復工事について解説するとともに、大まかな費用の相場をご紹介しましょう。
原状回復工事とはどんな工事?
原状回復工事とは、簡単にいうと「物件を入居前の状態に戻す」工事のことです。オフィスや住居といった物件の賃貸契約が終了し、借主が物件を貸主に明け渡す前に、契約書の内容をもとにして、必要な部分の撤去・交換等を行います。
原状回復工事を行う理由は、借主によって物件の使い道が大きく異なるためです。仮に一人目の借主が、自分自身の使いやすいように部屋をカスタマイズしたとします。もしそのままの状態で明け渡してしまうと、次の借主にとっては「使いにくい物件」になってしまう可能性があるのです。
そうなってしまうことを避け、次の借主が自由にカスタマイズしやすいよう、フラットな状態に戻しておく必要があるのです。
原状回復工事のタイミングは、オフィスや店舗、マンションによってそれぞれ異なります。住居の場合は、契約期間終了後に工事を行いますが、オフィスや店舗の場合は契約終了までに工事を完了させるケースがほとんどです。
原状回復工事の費用の相場
原状回復費用は、小・中規模オフィスの場合、坪単価2~5万円です。具体的には、30坪の賃貸事務所を撤去する場合、60~150万円前後が原状回復に必要な費用の相場となります。大規模オフィスの場合は坪単価5~10万円程度が相場です。さらに、ハイグレードビルと呼ばれるような高級ビルや、300坪超の大規模なフロアの場合、原状回復工事の費用は坪単価15~30万円にのぼることもあります。
これはあくまでも一般的なケースで、決まった金額ではありません。あくまでも参考程度にとどめておきましょう。もし、オフィスの内装にこだわってさまざまなカスタマイズを行っていた場合は、原状回復工事の費用が相場よりも高くなってしまうことがあります。
また、近年は工事会社の人手不足によって、原状回復工事の金額も上昇傾向にあるといわれています。このような現状も鑑みて、費用はケースバイケースであることを覚えておくとよいでしょう。
工事費用に影響するポイント
原状回復工事の費用が相場よりも高くなるのには、いくつかの原因があります。ここからは、工事費用に影響するポイントについて、それぞれ詳しく解説しましょう。
経年劣化
経年劣化や通常損耗についての工事を行った場合は、相場よりも費用が高くなる傾向にあります。一般的に、通常損耗や経年劣化の部分に関しては、借主は原状回復工事を行う必要はありません。しかし、賃貸借契約書に「経年劣化および通常損耗についても原状回復工事に含める」というような文言がある場合は、工事に含まれるため、その分費用が上乗せされるのです。
資材価格や処分費の影響
原状回復工事に用いる資材や、材料の処分費用の価格も工事費に大きく影響します。資材費や処分費は毎月のように変動します。また、地域によって輸送費や工賃も異なります。同じ内容・同じ規模の原状回復工事でも、時期や地域によって費用が異なることもあるのです。
内装にこだわっている場合
内装工事にこだわっているほど、原状回復工事の費用は高くなります。例えばクリニックでレントゲン室を設けている場合や、客室に暖炉やシャンデリアを設置した場合、防音室などの特殊な内装になっている場合などは、原状回復工事の費用がかさむ傾向にあります。
反対に内装工事をほぼしておらず、入居したままの状態で使用している場合は、その分原状回復工事の費用が安くなるでしょう。
水回りを大きく変更している場合
水回り部分を大きく変更している場合も、原状回復工事の費用は高くなる可能性があります。例えば、飲食店などに使用するために給排水設備を設置した場合、設備を撤去しなければなりません。物件によってはビル全体の水道を止めて工事をすることもあるので、その分費用はかさんでしまうでしょう。
オフィス退去時の原状回復工事は区分に注意

原状回復工事は、工事内容と工程が多岐にわたります。そのため、賃貸借契約書にて、「誰が工事業者に発注するのか」「費用を支払うのは誰か」を明確にすべく、A工事、B工事、C工事の3つの区分に分けられています。ここでは、それぞれの区分について詳しく解説しましょう。
A工事
A工事とは、建物の共用施設および躯体(くたい)部分に関わる工事のことです。具体的には建物の外装・階段、共用トイレ、消防施設などです。この部分は建物そのものの構造および資産価値に関わるので、所有権を持つオーナー、ビル管理会社が責任者となり、工事の発注から費用の支払いまでを行います。借主にとってはほぼ関係のない工事ではありますが、建物の使用者として気になる箇所があれば、借主はオーナーや管理会社に伝えて工事を依頼することが可能です。
原状回復工事においても、責任はオーナーおよびビル管理会社にあるので、借主が行う必要はありません。例えば、ビルの壁紙がはがれている、共用トイレが水漏れしているなどという場合は、オーナー負担で修繕工事を行わなければならないのです。
B工事
テナントの借主がオフィスや店舗、事務所として使用する際に、設備を増設したり、間取りを変更したりするための工事です。具体的には排気・排水設備工事やテナント専有の壁や天井の変更などです。工事の費用は借主の負担になります。
しかし、工事する部分が建物本体に関わる場合は、建物の安全や構造に影響する可能性が出てくるので、工事の権限はオーナー側にあります。そのため、オーナーが指定した業者に依頼しなければなりません。つまりB工事は、発注および費用負担は借主、業者を選定する権限はオーナーにあるのです。
原状回復工事において、一番注意が必要なのがB工事です。権限はオーナーであるのにもかかわらず費用負担は借主になるので、借主の想定している金額よりも費用が高かった、ということがあるからです。トラブルを避けるためには、オーナーと借主、双方が責任をもって工事の契約内容を確認し、費用の話し合いを行うことが大切です。
C工事
B工事と同じく、借主の意向で行われる工事です。B工事との大きな違いは工事内容が建物や施設に影響を与えない、という点です。照明器具の設置、クロスの張り替えなどが該当します。C工事は発注および業者の選定、費用負担まですべて借主が行います。
しかし、賃貸契約の際に「原状回復の施工業者はビル指定業者に限る」などの但し書きがある場合は、オーナー指定の業者に依頼することになります。
原状回復工事の費用削減方法
原状回復工事の費用は、工夫次第で削減することができます。ここでは、費用削減のための具体的な方法を紹介します。
セルフリフォームをする
原状回復工事は、業者にすべて依頼しなければならない、というわけではないので、可能なところをセルフリフォームすれば、費用削減につながります。とはいえ、強引なセルフリフォームで設備を壊してしまうと、その分修繕費がかさむので元も子もありません。あくまでもできる範囲で無理なく行うことが大切です。特に電気や水回りの設備、ガスなどは専門の知識と技術が必要となるので、業者に依頼するようにしましょう。
複数の業者に見積もり依頼を出す
見積もり依頼は複数の業者に出し、その中で一番納得できる業者を選ぶようにしましょう。会社によっては工期や費用が大きく異なる場合があります。また、業者の意見に流されて、どんどん工事範囲が増えていった、という事態を避けるために、事前に原状回復工事はどこまで行うのか、借主との間でしっかり話し合いをしておくことも大切です。
自身で見積もりを依頼すれば、相場が分かるので、値下げの交渉材料として使えます。見積もりの金額が妥当かどうかも判断できるようになるでしょう。
適切な業者に依頼する
適正価格で工事を行ってくれる業者に依頼することも大切です。ここでは適切な業者を見分けるためのチェックポイントをご紹介します。
見積もり内容が分かりやすい
原状回復費用の見積もりが出た際に「なぜこれだけ費用がかかるのか」を、丁寧に納得がいくように説明してくれる業者を選ぶことが大切です。見積もりに不透明な部分が残っていると、本来ならば支払う必要がない費用も請求される恐れがあります。
見積書を確認するポイントは以下の6つです。
- 工事内容が詳細に書かれているか。作業内容と費用が明記されているか
- 材料費や人件費が相場とかけ離れていないか
- 1回で済む工事が2回に分かれている、明らかに作業人員が多いなど、無駄な費用が含まれていないか
- トイレやエレベーターなどの本来行う必要がない共用部分の原状回復まで見積もりに含まれていないか
- 実際に工事を行う面積よりも大きな面積で見積もりを取られていないか
- 通常使用で起こった損耗など、原状回復には該当しない作業がないか
見積書をチェックする際には、しっかり注意しておきましょう。
対応が早い
見積もり依頼に即時対応してくれる業者を選ぶこともポイントです。スムーズに明け渡しを行ってもらうためにも、なるべく早めに原状回復工事を行わなければいけません。すべてにおいて対応がスピーディーな業者を選ぶようにしましょう。見積もりが早く出ると、その分着工や工事完了も早くなります。
施工事例が多数ある
原状回復の施工事例が豊富で、実績がホームページなどで公開されている業者を選ぶとよいでしょう。担当業者の説明だけでは、工事内容や大まかな費用を把握することはできません。その点、実績が分かれば、工事の工程や費用、工事完了後の様子などを事前に確認することができます。
まとめ
原状回復工事の費用は、オーナーと借主、業者の間でトラブルになりやすいもの。トラブルを回避するためには、借主とオーナーの双方が工事の範囲を確認し、工事費用の見積もりをしっかりと把握しておくことが大切です。賃貸借契約書をしっかりと確認したうえで、適切な業者に依頼し、借主側とオーナー側、どちらも納得できる工事を行うようにしましょう。