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原状回復

原状回復トラブルはどう解決すればいい?対処法や防止策を紹介

2022年12月27日

原状回復工事では、費用はどちらが負担するのか、工事の範囲はどこまでかなど、貸主と借主間でさまざまなトラブルが起こることがあります。トラブルが長期化したり、こじれたりすると裁判沙汰になることも少なくありません。そこで今回は、原状回復に関するよくあるトラブルとその解決策、トラブルを回避する方法を紹介します。

原状回復とは?費用はどちらが負担する?

まずは、原状回復とはどのようなものかを分かりやすく解説するとともに、貸主、借主それぞれに負担義務が生じるケースを具体的に紹介しましょう。

原状回復とは

原状回復とは、賃貸物件の契約期間が終了し、退去する際に入居時と同じような「本来あるべき状態」に戻してから明け渡すことです。

とはいえ、建物は経年劣化もするし、通常の使い方をしていても損耗するものです。これらもすべて原状回復の対象となるのかどうか、費用の負担義務は貸主、借主どちらなのか、といったトラブルも発生することがあるでしょう。

こうした原状回復をめぐるトラブルを未然に防止するために、国土交通省は妥当と考えられる一般的なルールを「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」として明記しました。ガイドラインには、借主の原状回復が必要なケースや原状回復を行う際の工事費用の負担割合を決める方法などが記されています。ガイドラインは平成10年3月にとりまとめられたのち、平成16年2月、平成23年8月に改訂が行われています。

原状回復の費用は誰が負担する?

ガイドラインによると、原状回復とは、借主の過失や故意、通常の使用を超えるような使用による破損や損耗を復旧すること、とされています。つまり、経年劣化や通常の使用による損耗は、借主に原状回復義務はない、ということです。それを踏まえて、貸主が費用を負担するケース、借主が費用を負担するケースについて、それぞれ具体例とともに解説しましょう。

貸主が費用を負担するケース

アパートやマンションなどの経年劣化や通常の生活による摩耗を原状回復する場合、費用は貸主負担となります。具体的には以下のようなケースが挙げられます。

  • 経年劣化による設備や内装の汚損
  • 家電製品を稼働させたことで発生する汚損
  • 地震や台風といった、自然災害による破損
  • 紛失や破損ではなく、入居者が新しくなる際のカギの取り換え
  • ふすまやクロス、畳などの自然変色
  • 次の入居視野を確保するための内装の手直し

借主が費用を負担するケース

故意や過失によって生じた汚損・破損の原状回復費用は借主側の負担となります。具体的には以下の通りです。

  • 破損や紛失によるカギの取り換え
  • ペットによる柱の傷や部屋の悪臭
  • 引っ越し作業時の傷や汚損
  • 物をかけるために開けたねじ穴やクギ穴
  • 借主の不注意で雨水が入り込んだり、水をこぼしたりしたことによる劣化や汚損
  • 設備を不適切に使用したり、メンテナンスを怠ったりしために発生した故障や汚損
  • 過失や故意で発生した内装の汚損

原状回復で発生するトラブルとは

原状回復の際、貸主と借主の間で、しばしトラブルが起こることがあります。ここでは、主なトラブルの事例について、発生する原因とともに解説していきます。

費用に関するトラブル

原状回復の費用に関するトラブルは最も多い事例の1つです。具体的には、貸主が経年劣化や通常損耗の原状回復費用を借主に請求してしまっていた、借主の想定よりも費用が高くなったため、過剰請求を疑われた、などが挙げられます。

また、原状回復の費用を負担する義務があるにもかかわらず、借主が支払いを拒否する、というケースも少なくありません。

工事内容に関するトラブル

貸主と借主の間で「どこまで元に戻すべきか」という考え方が大きく異なってしまうと、トラブルに発展する可能性が高くなります。

例えば、切れた蛍光灯や水栓器具の交換、コンセントの位置の変更は原状回復の範囲に入るのか、といったトラブルです。原状回復の範囲によって見積金額に大きな差が出てしまいます。賃貸契約書に明記されていない場合、貸主と借主の間でどちらに費用負担の責任があるのか言い争いになる場合があるのです。

工事期間に関するトラブル

工事期間が原状回復の期限に間に合わないことでトラブルに発展するケースもあります。

通常、住居は退去後に、オフィスは契約期間中に工事を実施します。ところが、オフィスの借主が原状回復工事は退去後に行うと勘違いしていたために、契約終了時に工事が終了していないトラブルが発生するのです。

また、慌てて工事を進めることによって夜間工事が必要になり、費用が高額になってしまうこともあります。そうすると、また要らぬトラブルの種になってしまいます。

原状回復工事に必要な期間は、オフィスの規模によって異なりますが、遅くとも退去の2ヶ月前くらいまでには貸主と借主の間で話し合いをスタートしておきたいものです。

原状回復のトラブルを回避するポイント

原状回復でトラブルが発生すると、手間や時間を取られてしまいます。大切なのは、トラブルが発生しないように事前にしっかり準備しておくことです。ここでは、トラブル回避に有効な対策をいくつかピックアップして紹介しましょう。

入居時の状態を確認しておく

入居時の物件の状態を、貸主・借主・不動産業者立ち会いのもと、しっかりと確認しておきましょう。ただ目視するのではなく、物件全体の状態を、隅々まで撮影しておくことも、トラブル防止に有効です。

貸主が「明らかに入居者が付けた傷だ」と思っても、借主が「入居前から付いていた傷だ」と主張した場合、証拠がなければ話は平行線のままです。室内を撮影した写真は、契約書と一緒に大切に保管しておくとよいでしょう。

契約内容を借主に説明する

原状回復義務を含めて、入居前に借主に契約内容を説明しておきましょう。退去時に借主に、「そんな内容は聞いていない」などと主張されてしまうと、トラブルになってしまいます。

できれば、契約書とは別にチェックシートなどを設けておいて、借主に契約内容を理解したことについて、署名をもらっておくとよいでしょう。

とはいえ、いくら入念に説明したからといって、借主に不利となる契約条項が有効となるわけではありません。あくまでもガイドラインに沿った契約書を作成するようにしましょう。

普段からコミュニケーションを取っておく

貸主と借主が普段からまめにコミュニケーションを取っておくことも大切です。例えば、ガス給湯器やエアコンなど、もともと設置されている機器が故障した場合、速やかに連絡してもらうようにすれば、その都度対応することができます。

また、貸主との関係が良好だと、何かあったときにすぐに報告してもらいやすくなります。また、借主も、貸主と気持ちよく契約および解約するために、居住スペースを丁寧に扱ってくれるようになるかもしれません。原状回復に関する話し合いもスムーズに行えるでしょう。

敷金を相場よりもやや高くする

敷金に原状回復費用の相場を加算して、やや高めに設定することもトラブル回避に有効です。

敷金とは、賃料の未払い・不払いに対する担保、借主の入居中に発生した毀損や汚損の修繕費用の補填金として、貸主が借主から預かるお金のことをいいます。

敷金を高めに設定しておくと、原状回復にかかる費用を賄うことができます。そうすると、借主は退去時に追加費用を出す必要がないので、トラブルが発生する可能性も低くなるでしょう。

とはいえ、借主の中には「敷金は戻ってくるもの」と考えている人も少なくありません。そのような人たちにも納得してもらえるよう、敷金の使用明細や修繕費の見積もりは、分かりやすく明記して借主に提示するようにしましょう。

原状回復でトラブルが発生したら?

いくら事前に対策を立てていたとしても、トラブルが発生する可能性は否めません。トラブルが発生してしまった場合は、正しい対処を行うことが早期解決のカギです。ここでは、トラブルが発生した際にどうすればいいのか?具体的な解決策をご紹介します。

費用の内訳を見直す

原状回復の費用に関するトラブルが発生した場合は、まずは内訳を確認してみましょう。賃貸契約書と内訳、特約を照らし合わせて、本来借主が支払う必要がない費用が含まれていないかをチェックするのです。この際、耐用年数の確認も忘れないようにしましょう。なぜなら、耐用年数によって原状回復費用の負担割合が異なるからです。

「原状回復の費用に関するトラブルとガイドライン」によると、カーペットやクッションフロアの耐用年数は、6年となっています。内訳を確認する際は、耐用年数もきちんと照らし合わせるようにしましょう。

オフィス物件の原状回復で、指定業者に工事を依頼した場合は、費用が相場よりもかなり高くなっていないかを確認します。指定業者にしか工事が発注できないケースでは、市場価格よりも高くなっていることが多いからです。

これらの作業を行い、まずは費用が適正かどうかを確認しましょう。

専門家に相談する

トラブルがこじれてしまい、解決が困難になってしまった場合は、専門家に相談することをおすすめします。

例えば、居住用物件の原状回復でトラブルが起きた場合は、国民生活センターに相談するとよいでしょう。国民生活センターでは、消費者基本法に基づいて、借主とオーナー、管理会社間で発生した苦情処理のあっせん、相談および裁判外紛争解決手続きを行っています。

法テラスに相談することも有効です。法的トラブルの情報、法制度を案内してくれるとともに、適切な相談窓口を紹介してくれるでしょう。

オフィス用物件でのトラブルは、居住用物件ほど相談先は多くありません。そのため、不動産に詳しい弁護士やコンサルティング会社に相談するのがよいでしょう。

また、原状回復の専門業者が、原状回復に関する相談を受け付けているところもあり、問い合わせするのも一つの方法です。

まとめ

原状回復に関するトラブルの多くは、貸主と借主間の費用や工事範囲に関する考え方の違いがもとで起こります。そのため、契約時に貸主が借主に原状回復義務についてしっかり説明すること、入居時の物件の状態をしっかり確認することで未然に防ぐことができるでしょう。もしトラブルが起きてしまった場合は、専門家に相談して早期解決に努めましょう。