原状回復の見積もり相場と見積書のチェックポイント|住居用・事業用で差はあるの?
2023年2月1日
借りていた物件から退去するとき、どのくらいの原状回復工事費用がかかるのか、気になる方は多いのではないでしょうか。費用相場や見積もりのチェックポイントを事前に把握しておくことで、工事費用を減額できたり、不要なトラブルを避けたりすることができます。本記事では、物件の賃借人が押さえておくべき原状回復の見積もり相場と、見積書のチェックポイントを紹介します。
原状回復工事の見積もり相場
原状回復の工事費用は、
- 面積
- 劣化具合
- 作業人数
などによって決まります。
物件が住居用か、事業用かによっても相場は大きく異なるため、それぞれにわけて紹介します。
住居用の場合
アパートやマンションなど住居用の物件のハウスクリーニングにかかる相場は、次のとおりです。
間取り | 費用相場 |
ワンルーム、1K | 1.5~3万 |
1DK、1LDK | 2~4万円 |
2DK、2LDK | 3~5万円 |
3DK、3LDK | 5~8万円 |
4DK、4LDK | 7万円~ |
ただし、住居用物件の場合、特約等が結ばれていない限り、原状回復にかかる費用の負担義務は貸主側が負うのが基本です。
国土交通省が作成した『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』によると、賃借人(物件を借りていた人)が原状回復の義務を負うのは「故意の過失や、手入れを長期間怠って生じた損耗」および「通常想定されていない使い方で生じた損耗」の2つとなります。通常生活しているなかで生じる、やむを得ない「自然損耗」については賃料に修繕費が含まれているため、賃借人が原状回復をする必要はありません。
よって、賃借人が原状回復しなければならないのは、次のようなケースです。
- 長期間手入れを怠ったために除去できなくなった壁や床の汚れ
- タバコのヤニによる壁クロスの黄ばみ
- 壁や床に故意に開けた大きな穴
- 大きな家具の搬入の際に養生を怠って生じた汚れや傷
これらの損耗の原状回復にかかる費用相場を、工事の種類別にまとめました。
原状回復工事内容 | 費用相場 |
壁や天井の穴補修 | 約3万円(箇所) |
フローリングの汚れ除去 | 約1万円(箇所) |
フローリングの張替 | 約8千円(平方メートルあたり) |
畳の張替え | 約6千円(畳あたり) |
カーペットの張替え | 約3千円(平方メートルあたり) |
壁紙の張替え | 約2千円(平方メートルあたり) |
事業用の場合
店舗の原状回復工事にかかる費用は、住居用と比べて高くなる傾向にあります。もちろん物件や契約内容により費用は異なりますが、30坪未満の小規模店舗では1坪あたり4~6万円程度、30坪以上の大規模店舗では1坪あたり3~5万円が相場といえるでしょう。
ただし、業態に合わせた内装工事を行って特殊な使い方をしていた場合は、原状回復にかかる工事費用も高くなりがちです。
例:
- 飲食店:厨房の防水工事や機器処分
- 美容室・サロン:排気ダクト工事や個室の解体
- 病院・クリニック:レントゲン室等の特殊設備の解体と廃棄処分
また、工事時間が限定されたり夜間作業が必要となったりする場合は、通常よりも費用が高くなるでしょう。
オフィスや事務所として物件を利用していた場合は、ビルのグレードや指定業者によって金額が異なります。また、原状回復工事業者が物件の広さの基準を設けているため、300坪を超える大規模なオフィスの場合は坪単価が30万ほどに高騰する傾向にあります。
原状回復工事費の見積書チェックポイント
原状回復工事費の見積書を受け取ったら、以下の4つのポイントをチェックしましょう。
- 具体的な工事内容が記載されているか
- 相場と大きな差がないか
- 面積や作業人数が合っているか
- 原状回復以外の作業が含まれていないか
具体的な工事内容が記載されているか
チェックポイントの1つめは、「工事内容が詳しく記載されているかどうか」です。たとえば、「〇〇工事一式」という表現では、具体的にどの場所にどのような工事を行うのか分かりづらく、本来であれば必要のない工事まで依頼してしまう恐れもあります。
- カーペット剥がし処分
- クロス張替え
- ハウスクリーニング
など、できる限り項目や内訳を細かくわけて記載してもらうことで、不要な工事が含まれていないかなどをチェックしやすくなります。
相場と大きな差がないか
見積もり額が相場とかけ離れていないかどうかもチェックしておきましょう。
費用の詳細については専門業者でなければ判断しづらい部分もありますが、だいたいの費用相場を事前に確認しておくことは大切です。たとえば、クロスやカーペットなどの材料費は、インターネット検索などで金額を確認できます。
また、原状回復工事の合計金額だけでなく、個別の単価設定にも注目してみましょう。単価を見ることで、1平米あたりどれくらいの費用がかかっているのか確認することができます。
面積や作業人数が合っているか
工事面積や作業人数の確認も必要です。
原状回復工事の見積もりでは、「図面上」の寸法に基づいて計算することで、工事費用が多めに見積もられているケースがあります。図面上の寸法と実際の寸法では計算方法が異なるため、実際に作業を行う工事面積よりも大きい面積で費用が算出されていることもあるのです。実際の工事面積と見積書の面積が一致するかどうか、しっかり確認しておきましょう。
また、作業人数が多くなるほど人件費がかかり、費用も高くなります。作業人数があまりにも多すぎると感じた場合は、なぜその人数が必要となるのか、業者から納得できる説明をしてもらうとよいでしょう。
原状回復以外の作業が含まれていないか
原状回復と無関係の作業が見積もりに含まれていないかも、チェックしておきましょう。原状回復義務は、あくまでも契約書に定められた範囲内となります。そのほかの作業を行った場合、余分に費用がかかるだけでなく、オーナーとの間にトラブルが発生する恐れもあるため注意が必要です。
たとえば、契約内容にない
- 廊下やトイレなどの共有部分
- 室内の塵分・二酸化炭素・気流の測定
- ドアや窓ガラスの新品交換など、借りたときよりもよい状態にするようなグレードアップ工事
などの項目が見積もりに含まれている場合は、削除と減額を依頼しましょう。
まとめ
原状回復の見積もり相場は、契約内容に加え、物件の広さやどのような使い方をしていたかによっても異なります。また、住居用よりも事業用の物件のほうが、工事費用が高くなることが一般的です。
業者から見積もりを受け取ったら、具体的な工事内容をチェックし、原状回復以外の作業が含まれていないか、金額や作業人数が一般的な数字と大きくかけ離れていないかなどを確認しましょう。また、実際の工事面積に合わせた見積もりを依頼することで、減額が可能になることもあります。
見積書の内容を把握していないと後々トラブルにつながる恐れもあるため、不明点がある場合はきちんと先方に確認をとって解消しておくことが大切です。