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原状回復

原状回復義務は民法改正でどう変わったか| 事務所や店舗への影響

2023年3月1日

2020年に賃貸借契約の民法が改正され、事務所や店舗の原状回復義務の定義も様変わりしました。具体的にどのような内容が変更されたのか、詳しく知りたいという方も多いかもしれません。

この記事では、民法改正で原状回復に関わる代表的な項目について解説した上で、事務所や店舗にどのような影響を与えるのかというポイントについてご紹介します。これから賃貸借契約を結ぶ方や、現在借りている物件の原状回復について把握しておきたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

2020年の原状回復民法改正点

2020年4月に賃貸借に関する民法の改正を受けて、原状回復についての項目も定義の明確化や変更が実施されました。なかでも大きなポイントとなるのは、「原状回復に対するルールが明確になった」ことです。

この改正によって借主が原状回復義務を負うのは、部屋を賃貸した期間中に発生した損傷に限られ、通常損耗や経年劣化は対象外となることが明瞭になりました。例えば、家具の設置による床のへこみや、地震によって破損したガラス、家電製品の設置によって黒ずんだ壁面などは通常損耗、もしくは経年劣化に当たるため、貸主の負担で原状回復することになります。

一方、タバコのヤニや臭い、引越し作業で付けた傷などは、借主が原状回復しなければならないとされているので注意が必要です。

賃貸借に関するその他の改正点

賃貸借に関して改正されたその他の主な項目としては、以下が挙げられます。

  • 敷金の定義
  • 連帯保証人
  • 建物・設備の修繕

それぞれの改正点の内容については、以下で詳しく見ていきましょう。

敷金の定義

民法改正によって敷金の定義、および貸主側の返還義務が明確になりました。そもそも敷金は、借主が家賃を不払いや未払いの状態になった場合の担保として、貸主へ預けるお金のことです。

この改正では、賃貸借契約を終えて物件が貸主に戻った時点で、弁済に充てた残額の敷金を借主へ返還する義務が生じるようになりました。

また、敷金の呼び方が異なる場合も、金銭の交付として持つ性質が同一であれば、同じく敷金として扱われることと定義されています。例を挙げると、「敷金」ではなく「保証金」と呼んだ場合も、万が一の担保金として貸主が保有することには相違ないため、敷金と同じように扱わなければなりません。

連帯保証人

賃貸借契約において連帯保証人となる際、上限額を規定しない個人の根保証契約は、無効になることが明確になりました。根保証契約とは、将来的に生じる可能性がある債務も包括的に保証する契約のことで、連帯保証人が思わぬ債務を負うケースもあります。

しかし、上限額を「○○円」など明確に決めない根保証契約に関しては無効になるとルール化されたため、連帯保証人が負う責任が改正前よりも減ったといえるでしょう。

なお、主債務者や連帯保証人が亡くなったり、連帯人が破産の手続きを実施したりした場合は、以後の保証は対象から外れることも規定されています。

建物・設備の修繕

建物・設備の修繕に関して責任の所在が明確化したため、借主側がより柔軟に対応できるようになりました。

例えば、エアコンに修繕が必要なことを貸主へ何度も知らせたにもかかわらず対応してくれない場合は、借主側の判断で修繕作業を依頼できます。このように貸主側にも管理責任がある設備の修繕内容であれば、費用を後から請求することも可能です。

その他、緊急を要する場合や、貸主側がすでに把握しているのに初動が遅い場合なども、借主の判断による修繕を実施できます。実際に貸借物を使っているのは、借主であるという視点から、柔軟な対応が可能となる改正がされているのです。

民法改正による事務所や店舗への影響

賃貸借における原状回復の義務は、民間人が借りる賃貸住宅と、事業者が借りる事務所や店舗でも同じように生じます。そのため、事業者が借りているオフィスであるからといって、原状回復すべき範囲や項目が民間賃貸住宅よりも多いということはありません。

ただし、原状回復に関する貸主と借主の負担割合を決めた「特約」が、賃貸借契約書に明記されている場合は、通常の原状回復範囲を超えた負担が発生するおそれがあります。

仮に個人が貸借した物件で特約がある場合は、消費者契約法や民法90条などの適用によって負担割合を減らせる可能性がありますが、事業者の場合はこうした法適用が困難です。

特約の内容によっては、どちらかの原状回復負担の割合が極端に増えかねないため、事務所や店舗の契約時に特約を規定する場合は、詳細までしっかりと決めておきましょう。

まとめ

民法改正によって原状回復における複数のルールが明確化、もしくは変更されました。原状回復の義務範囲が規定されたほか、建物・設備の修繕や敷金の定義も変更されるなど、借主側が不利益を被りづらいような仕組みとなっています。

ただし、事業者が賃貸借契約で原状回復特約を結ぶ場合は、割合負担で損をしないように注意しなければなりません。内容によっては、一般的な相場に比べて多くの費用がかかる可能性もあるためです。

これから賃貸借契約を結ぶという方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。