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原状回復

原状回復費用の勘定科目とは|修繕費として計上できるもの・できないもの

2023年3月1日

「原状回復費用の勘定科目はなにを選べばよい?」「どのような仕訳をしたらよい?」などと疑問を持っている企業の経理担当者は多いのではないでしょうか。

本記事では、原状回復費用の勘定科目や、実際の仕訳方法について解説します。本記事を読むことで、原状回復にかかる費用の貸主・借主双方の仕訳方法がわかり、実際に会計処理する際にスムーズに進めることが可能です。

原状回復費用の勘定科目はなにか

フローリングや畳、クロス、キッチンなどを原状回復のために修繕した場合の勘定科目は、以下の2つがあります。

  • 修繕費
  • 特別損失

原状回復工事を行った際は、基本的に「修繕費」の勘定科目を用いて処理します。また、かかる費用によっては「特別損失」を用いる場合もあります。仕分する際は、この2つの勘定科目を実際にどのような状況で使い分けをするのか把握しておくことが大切です。

ここでは、原状回復費用の勘定科目である「修繕費」と「特別損失」について見ていきましょう。

修繕費

原状回復費用の勘定科目は、「修繕費」を使用することが一般的です。修繕費とは、経営に必要な建物や備品などの有形固定資産を修理する際の費用のことです。具体的には、部品交換や維持費、原状回復費用などが含まれます。

勘定科目で修繕費を使用する際は、見積書の項目を「原状回復費用」とする必要があります。原状回復費用であることが明確でなければ、修繕費として認められない場合があるので注意してください。もし、見積書の項目が原状回復費用でない場合は、工事業者に連絡して修正された見積書を再度発行してもらいましょう。

また、次のような費用は、原状回復ではなく資産価値を高める工事費用とみなされるため「資本的支出」となります。

1. 建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
2. 用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額
3. 機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうち通常の取替えの金額を超える部分の金額

引用元:国税庁「修繕費とならないものの判定」

資本的支出とみなされた場合は、固定資産の取得原価に加算され、減価償却によって長期的に費用計上していきます。

特別損失

原状回復費用を計上する際に、「特別損失」の勘定科目を使用する場合もあります。特別損失とは「通常発生しない(継続的でない)臨時の損失」や「損失が高額」な場合に用いられる勘定科目です。そのため、原状回復の費用が次のような場合は、特別損失として計上する可能性があります。

  • 原状回復の費用が敷金を上回る場合
  • 原状回復の費用が高額な場合

特別損失は営業利益や経常利益には影響がないため、特別損失が原因で赤字になったとしても「一過性の損失」「突発的な事象」と判断されて、金融機関の評価はそれほど悪くならないといわれています。

ただし、原状回復にかかった費用を特別損失として処理するかどうかは、税務署や税理士の確認が必要です。修繕費だけでなく、特別損失として計上する可能性があることを理解しておきましょう。

敷金から原状回復費用を差し引く

マンションやアパートなどの借主は、入居の際に貸主に敷金を支払うのが一般的です。

敷金とは、賃貸契約をする際に契約者が支払う費用の1つです。家賃の未払いなどに備えて、貸主が借主から担保として預かるお金となります。家賃の未払いや、原状回復に伴う修繕が発生した場合は、かかった費用が敷金から差し引かれる仕組みです。

そして、借主が退去する際に、敷金の残金が返金されます。ただし、家賃の未払いや原状回復費用が敷金より高い場合は、退去時に敷金が返金されることはなく、借主は不足分を支払う必要があります。

また、日常生活の中で付いた汚れや借主の対応に落ち度がないキズ、へこみなどは、借主が修繕費用を負担する必要があるため、敷金からは精算されません。

なお、貸主へお礼として支払う「礼金」については、家賃の未払いや原状回復工事の有無にかかわらず、借主に返金されることはありません。

修繕費として計上できるもの

修繕費として計上できる原状回復工事は、以下のとおりです。

  • クロス張り替え
  • 床の張替え
  • エアコンの撤去
  • 退去前のクリーニング
  • 産業廃棄物の回収処理

上記のとおり、一般的に原状回復として行われる工事の多くが「修繕費」として計上可能です。また、上記のほかに、照明の取り替えや、内装の解体工事にかかった費用についても、修繕費として処理できます。

修繕費として計上できる場合は、原状回復にかかった費用を年度内で一括処理できるため、その年の課税所得(利益)が減り、節税効果が期待できます。

原状回復の費用は、基本的に修繕費として処理するケースが多いため、どのような工事が修繕費に該当するのか事前に把握しておきましょう。

なお、修繕費として計上する場合には、見積書の項目が「原状回復費用」と明記されている必要があります。

修繕費として計上できないもの

工事費用全てを修繕費として計上できるわけではありません。修繕費として計上できないものには、解体工事などがあります。以下のとおり、解体工事に関しては、目的に応じて資産または費用のどちらかで処理します。

  • 解体後に新しい建物を建てる:資産として計上(前払金)
  • 解体後に新しい建物を建てない:費用として計上(固定資産除却損)

固定資産除却損とは、事業に不要となった有形固定資産を除却する際にかかった損失のことで、特別損失に分類されます。

不動産だけでなく、機械装置や器具備品、車両、建物に付属する設備なども、固定資産除却損の対象です。このように、工事内容によっては修繕費以外の勘定科目を用いることを把握しておきましょう。

仕訳

ここでは、原状回復費用を修繕費として計上する場合と、敷金から補填する場合について、貸主・借主それぞれの立場の仕訳を紹介します。

どのような仕訳をするのか事前に把握しておくことで、実際に会計処理する際にスムーズに進められます。

修繕費の勘定科目で仕訳

原状回復工事にかかった費用を修繕費として処理する場合の仕訳は、以下のとおりです。

▼条件

  • 貸主側の仕訳
  • 原状回復費用 10万円
  • 現金払いの場合
借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
修繕費100,000円現金100,000円原状回復費用
  • 振込みの場合
借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
修繕費100,000円普通預金100,000円原状回復費用
  • 掛けで支払った場合
借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
修繕費100,000円買掛金100,000円原状回復費用

借主側の仕訳も、基本的に上記と同様です。このように修繕費の仕訳は、シンプルで難しくありません。借方に修繕費、貸方に現金や普通預金などの支払方法を記載します。

原状回復の工事が修繕費の対象であれば、かかった費用を一括計上できます。

敷金から原状回復する場合の仕訳

原状回復費用を借主が貸主に対して支払った敷金から補填する場合の仕訳は、以下のとおりです。

▼条件

  • 貸主側の仕訳
  • 原状回復費用10万円(現金支払い)
  • 敷金20万円
  • 残金10万円を借主に返金
借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
差入保証金200,000円現金100,000円敷金の返還
雑収入100,000円原状回復費用

原状回復費用は修繕費として計上できますが、敷金から差し引く場合は「雑収入」を用います。

▼条件

  • 借主側の仕訳
  • 原状回復費用20万円
  • 敷金20万円
借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
修繕費200,000円差入保証金200,000円原状回復費用

また、敷金30万円のうち、原状回復費用が10万円で残金20万円が普通預金に振り込まれた場合の仕訳は、次のとおりです。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
修繕費100,000円差入保証金100,000円原状回復費用
普通預金200,000円差入保証金200,000円敷金の返金

まとめ

原状回復工事にかかる費用は、基本的には修繕費として処理しますが、特別損失として計上する場合もあります。原状回復費用を計上するだけの場合と敷金から差し引く場合とでは、仕訳が異なるため注意が必要です。

あらかじめ勘定科目と仕訳方法を把握しておくことで、会計処理をスムーズに進められます。原状回復の予定の有無にかかわらず、ここで紹介した内容は把握しておきましょう。